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『農業経営者』定例セミナー

戦後農政を総括する

  • 東北大学農学部 助教授 大泉一貫
  • 第7回 2007年12月14日

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平成14年に発表された米政策改革大綱に伴う施策が進んでいる。それは昭和46年以来の政府管理の米政策を市場の原理にゆだねる道筋であり、日本農業の未来のために避けて通れぬ改革であった。聖域化されてきた米農業を振り返ることでこれからの日本農業を考える。
  • 価格:
    510円

 

【『農業経営者』編集部からのセミナー解説】

「戦後農政はそろそろ終わるかな、と思っていたのですが、参議院選挙が終わった後、必ずしもそうではないという雰囲気になってきた」 農業はいつも政治に翻弄される産業、と大泉氏は語る。安倍政権までは少なくとも農業の活性化を通じた自立型の農業・農村振興政策だった。今、これが格差を生むというので、財政依存型の農家所得向上・社会保障的な保護政策に先祖がえりしつつある。

 自立型農政とは何か、それによって、どういう社会ができるのか。わかりやすいモデルはオランダやスイスなど、EUの成熟小国だ。これらの国々ではITなどの先端産業とともに、農林水産業が主要産業であり、輸出産業に成長している。日本は、EU諸国と一体どこが異なるのか?それはオランダにおけるITと花卉、スイスにおける観光と農業のように、農業と他産業との有り様が大きく関係している。

 日本でも、千葉・茨城・愛知・静岡など、成熟した消費市場を抱え、他産業のノウハウや成果を利用でき、産業同士の融合が可能な地域では農業が成長している。他産業を意識した顧客志向の強い「先進国型」農業を展開するには、政策も「産業振興的な農政」を意識して、民間の知識やアイディアを活かす仕組みづくりが必要だ。

 さて、戦後農政ではどうだったか?農水省の産業政策は、施策が目標に向かって体系化していない。農政課題が並立し、施策が相互に相殺している(例えば米価維持政策と農業経営の体質強化のように)感があり、実効性に乏しい。理由として、①政策が政治イシューになることが多く、絶えず揺れ、思い切った施策展開ができない②政策課題が全国一律で、地域や個々の経営者にふさわしくない。さらに民間への不信感があり、民間のアイディアが蓄積しない構造がある。③農家の所得形成、有効需要創造に特化し、農業団体をパートナーとした中央集権的な「戦後高度経済成長期」の発想が底流にある。

 福田政権が続く限りこの方向への「逆流」が続き、農業経営者育成政策が初めて登場した92年以前に戻っていくだろうと大泉氏は憂えている。

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