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【『農業経営者』定例セミナー】
2008年、野菜流通はどう変わるのか!?
- (株)農経企画情報センター 代表取締役 小林 彰一
- 第9回 2008年01月18日
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【『農業経営者』編集部からのセミナー解説】
国産野菜は今、過剰なのか? それとも不足なのか? 野菜の生産と消費、その流通について、講師・小林彰一氏はまず世間の常識に疑問符をつけた。
過去10年間で野菜の国内生産は15%、220万t減っている。輸入量が増えたから、国産が減ったのか? この期間で増えた輸入量は70万tだから、流通量は150万t減ったことになる。実は輸入量で増えたのは、業務・加工用だ。これらはネットで入るから、国内生産の減少量を輸入増の70万tでだいたい補えている。そして国内で消費される野菜のうち、加工品の割合が増えている。つまり、消費量が減ったのではなく、供給量が減った考えるのが妥当だ。
だから、「野菜をもっと食べよう」というキャンペーンよりも、落ち込んだ国内生産量を拡大する必要がある。落ち込みを招いたのは、生産者の「単価主義」で、マーケットで良い値段が出ないと生産を減らす「縮小再生産」が続いた結果なのだ。
「国産志向」が小売・加工・業務用需要者で高まっている。企業は安全のリスクを犯したくないので、国産原材料への強い要望がある。産地はとにかく小売企業と提携しようと進めており、中国産など輸入野菜の「国産への代替」化傾向と、生産団体の需要者との契約取引きが活発になるだろう。
また、地産地消をフードシステムとして確立させる試みが進む。神奈川県では地産地消を学校給食に一斉導入し、富山県では小売業で同様の取り組みを開始した。地域の顧客がどのような野菜にニーズを持っているかを吸い上げ、地域の野菜生産に反映させる仕組みづくりが進んでいるのだ。
さらに注目されるのは、小売業や食品メーカーなどを顧客を持つ中卸業者の、仲介・斡旋・調整・提案機能を強化する動きだ。小売業や食品メーカーなどのニーズはデストリビューターの中卸業者に伝わる。茨城県や宮城県などでは、早々に連携を進めている。
彼らは脱「単価主義」の提案をする。例えば、冷凍ホウレンソウのキロ単価は50〜55円、従来の産地では引き合わない。ところが大規模化や水田転作を進める地域で、密植にして40〜50cmにすれば、反当り5tで25万円になる、手取り金額による経営だ。彼らを通して流通企業と集落営農組織との「連携強化」が進むだろう。
販売面では、スーパーの野菜売場は硬直している。52週の安定供給を徹底させた結果、いつも同じような売場になってしまった。日本の主婦は感覚的で、先週198円だったホウレンソウが、今週山盛りで150円! という売場に反応する。だから、売場に活気があるのは八百屋系のスーパーだ。野菜売場にサプライズがある。つまりは市場出荷・相場に連動した販売形態が見直されているのだ。
最後に安心・安全。これはもう消費者に浸透している。もっと必要なのは、おいしいから買ってくださいという「おいしさマーケティング」だ。メニューや食材の組み合わせを小売店、中・外食と連携しながら考えることが必要だ。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
『農業経営者』読者の会 定例セミナー
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