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【『農業経営者』定例セミナー】
ファーミング・エンターテイメント~腹ではなく心を満たす農業ビジネス~
- 体験農園「大泉 風のがっこう」 園主 白石好孝
- 第22回 2008年09月26日
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【『農業経営者』編集部からのセミナー解説】
講師は、体験農園「大泉風のがっこう」園主白石好孝氏。同氏は体験農園を新しい都市型農業ビジネスとして進化させた第一人者である。若い頃から練馬区という立地での農業のありかたに悩んだという。練馬区の農産物が市場での競争力が弱めるなかで、バブル期には「都市農地は低未利用地」と批判された。農地を守ろうと意気込んでも近所からは「そうは言っても私は白石さんの野菜を食べていない」と言われた。それらの経験のなかで、都市で消費者を前にして農業するなら、きめ細かく消費者に対応して地域の理解を得られる農業をしなくては、と行き着いた。
ふと周囲を見まわすと、区が運営する市民農園が流行っている。利用料は無料だが、あまりうまくできてない。ならばノウハウも畑も提供する野菜作りのカルチャースクールをやれば、生産だけの農業の替わりになると思いついた。そこで区役所に、区がコストをかけて管理している市民農園を、農家にやらせてくれと提案した。
そこから出発した農業体験農園は、いわゆる市民農園とはまったく違う。農家が開設し、耕作の主導権を持って経営管理する農園であり、生産緑地地区における農業経営である。年間利用料は一区画約30㎡で区民が3万1千1千円、区外利用者は4万3千円。これは土地の賃貸料ではなく、入園料と野菜収穫代金、つまり収穫物の代金先払いである。園主が定期的に講習会を開催して、利用者は講習会を聞いたあと自分の区画で作業する。園主は収穫祭や交流会といった利用者サービスも行う。同氏は現在125区画を運営、売上は反当約100万円、コストは約3割だ。利用者側は、野菜のいろいろな情報を得るだけではない。会社勤めの中高年には、地域のコミュニティをも提供している。ある利用者が収穫物を小売価格に換算したら8万円相当だったというから実利も相当だ。しかし真の醍醐味は、その先にある。
「初めて種を播いた人が、発芽しているのをみて感動し、私に感謝してくれるんです。新鮮な驚きであったと共に農民であることに誇りを感じました」
農業体験農園のシステムは今、3大都市圏を中心に60農場に展開している。運営ノウハウは無償のフランチャイズとして提供されて全国展開中だ。
「人口5万人の都市から車で30分圏内なら体験農園は成立する。小さな農家が経営として十分成立して、なおかつ農業に誇りを見出しながら、消費者にきちんと農業を伝える。そんな仕組みにしていきたい」
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白石好孝 シライシヨシタカ
体験農園「大泉 風のがっこう」
園主
1954年東京都練馬区生まれ。77年東京農業大学農学部卒業後、約1年間北海道でユースホステルでのアルバイト生活を送ったのち就農。91年東京都農協青壮年組織協議会委員長、92年全国農協青年組織協議会委員長に就任。97年市民参加型の体験農園「大泉 風のがっこう」の運営を始める。2003年NPO法人「畑の教室」を設立し、理事に就任。著書に『都会の百姓です。よろしく』(コモンズ)、共著に『体にやさしい・おいしい野菜のつくり方―農家のコツ教えます』(西東社)がある。
『農業経営者』読者の会 定例セミナー
月刊『農業経営者』読者の方に向けて、農業経営者や関連業界人を講師に招き、農場の成長、発展に役立つ定期セミナーを毎月(年間20回以上予定)開催しています。セミナーへは一般参加も可能です(5,000円/1回)。懇親会では、情報交換や人脈構築の機会を提供します。目的意識の高いほかの参加者との出会い・交流の場としてもご好評いただいています。
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