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新・農業経営者ルポ

動物園御中。今後はもう餌の心配はいりません

京都府・三重県・奈良県の県境にある京都府南山城村。この、バス会社すら撤退してしまった山奥の山村に、全国で2つとない飼料ビジネスを展開する夫婦がいた。売るものは「動物園の飼料」。無農薬で育てた牧草を刈りとりユーカリ、樫、竹などとともに届けるというのだが……「誰にでもできそう」などと思ったら大間違い。そこには食うや食わずの苦闘から生まれた経営哲学と工夫があった――。
 とてつもない急坂を器用に降りていく。坂には一面の孟宗竹。素人の自分には単なる竹藪にしか見えないが……実はここが日本で二人といないプロフェッショナルの「農場」だった。『クローバーリーフ』の西窪武氏が、切り倒した竹から枝葉を刈り、茶色い葉を落としながら話す。

「ジャイアントパンダは1日に20kg、竹3本分くらい食べるね。レッサーパンダは1日に2kgくらい。今は和歌山県の『アドベンチャーワールド』にいる双子のジャイアントパンダとその親の分、京都市動物園、大阪の天王寺動物園のレッサーパンダの分など全国7カ所の動物園に納めてるよ」 年商は約5000万円。西窪氏自身も「ウチのほかには聞いたことがない」というビジネスだ。一見、誰にでもできそうなことに思えるが、話を聞くうちに印象が変わってくる。

「4月から6月はちょうど葉が入れ替わる時期で、美味しい竹が採れないんです。だから、暖かいところ、寒いところ、いろんな場所の竹藪を買ったり借りたりして、1年中いい竹を届けています。といっても最近は温暖化の影響で何があるかわからない。難しいものなんですよ(笑)」 西窪氏は坂を下りられない筆者を見上げ「だって自然を言い訳にできないから」と言う。竹の枝葉が束になったところで、彼は急斜面を登ってトラックに積み上げ始めた。見渡せば西窪氏の厳しい言葉とは裏腹の、のどかな山並が広がっていた。

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