ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

モノでなく、顧客の必要に応える農業経営を目指す


あえて契約栽培で

 坂上さんは生産物を高く売るための直売ルートや集荷をしているわけではない。あくまで生産だけ。しかも、取引先はすべて、市場出荷と比べたら単価の安い、加工メーカー向け契約生産である。始めたばかりのデントコーンについても畜産農家・酪農家やその団体との契約生産を目指している。

 実は、坂上さんには苦い思い出がある。家に戻り農業を始めてすぐ、父親の反対を押し切って、高値を狙って10ha規模でダイコンを作った。結果は、「家一件損したかもしれないほどの惨たんたるもの。資金繰りをしてくれた社長(父)に感謝している」と笑う。それ以来、農産物というモノを高く売るという考え方を捨てた。モノを売るのではなく、取引相手が必要とするサービスを売る仕事に徹しようと経営理念を変えたのだ。

 天候条件などの変化があっても、契約した量と品質を守るため、想定収量よりかなり多めに作付けし、過剰分はすきこんでしまう。

 契約栽培は、単価は低いが、無理と無駄のないシミュレーションを行って実行すれば、企業的な経営管理が可能になり、むしろ確実な利益を出せ、収益も上がるという。

 また、坂上さんはそうした考えにマッチするパートナーとしか組もうと思わない。その単価で生産が可能かどうかは当然考えるが、高値を提示する相手と組むわけではない。

 主要な作物について詳述する。

【ケール】
 9月入ると定植し、11月~3月に収穫する。

 収穫は大量の人手を必要とする。労力は地元の人たちだ。収穫されたケールは、日曜日を除く毎日、坂上さんの農場から10tのトラックで各地の工場に直送される。

 畑に仮置きしている間も軽トラックの荷台に日除けの寒冷沙をかけるなど、最高品質で出荷できるように心がける。どこの畑、どの時期の出荷品であろうとも品質に変化がないように気を遣う。

 先にも書いたが、加工メーカーとの契約数量・品質規格の要求に応えるため、必要な栽培面積より大目の作付けをする。天候条件その他のアクシデントが発生した場合でも、契約先に対してした約束を果すためである。  「自分はモノとしてのケールやジャガイモを売るのではなく、取引先が求める必要に応えようとしているのです。モノというよりサービスを提供して、その対価を得ている」と坂上さんは何度も口にした。

 ケールは3月中に出荷が終わる。収穫作業をしているその隣りの畑では、チョッパで収穫しないケールを粉砕している。

関連記事

powered by weblio