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新・農業経営者ルポ

ハーブを「必然」にした40年

霜多増雄は国内有数のハーブ生産者。約40年前に初めて欧州に渡り、食の洋風化を必然と見て、需用を掘り起こした。料理界には幅広い人脈をもち、地域の枠をも軽々と越える。経営の根本に置くのは、消費者への思いと農業を自然界とのかかわりでとらえる科学の視点だ。(秋山基)
 舌鋒は鋭く、時に辛らつな刺激を帯びる。

 「栄養とおいしさは両立する。野菜本来の機能性、価値を消費者に届けるのが百姓の使命でしょう。よく『有機栽培で付加価値を』なんて安易に言うけど、食べる価値のないものだったら、有機だろうが何だろうが付加価値なんてないんだよ」

 霜多増雄はハーブを中心とした生産部門 シモタ農芸と販売部門の(株)M&Yシモタファームを経営する。茨城県取手市と栃木県那須塩原市の国内2カ所を拠点とし、計9haのハウスで約120種類のハーブを栽培。ホテル、レストラン、スーパーなどに供給している。

 その栽培手法を世間の用語で説明すれば有機農業ということになるのだろう。しかしJAS認証を取得する気はないし、パッケージにも「有機」とは謳わない。「当たり前の栽培方法であって、わざわざ口にすることではない」と思っているからだ。

 120種という品揃えは、様々な料理人たちとの付き合いの長さを物語る。霜多自身は、「増やそうと思って増やしたわけじゃない」とあっさりしたものだが、特定店だけがソースの隠し味程度に使うハーブや、供給先限定でブレンドするハーブティー、そのほかにコマツナやミズナ、ルッコラといった葉物野菜も作っている。

「ハーブなら、注文されれば、必要なものが必ずある状態。こっちにとってはリスクでもあるけど、お客さんへの恩返しのつもりだな」 科学の眼で土をとらえ、経営の観点から需用を見る。そして心で顧客に応えるのが、霜多の言う「百姓」の姿だ。

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