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新・農業経営者ルポ

マルハナバチに託す部会3代、夢の系譜

 町会議員なども務めて多忙な大崎は04年末に部会長職を退き、糸屋にバトンタッチ。二人は、これを機に部会の規約を改正し、これまで申し合わせだったネット張りや巣箱の適正処理を規約に盛り込もうと考えた。違反した場合は出荷停止や除名などの罰則を適用する。

 ネット張りには1戸あたり数十万~百数十万円の費用がかかり、農家の負担は大きい。部会員からは「厳しすぎる」と異論も出た。しかし、大崎は自分たちの手で生態系を守らなければならないことを懸命に説明し、部会員の了承を得た。大崎から糸屋への大きなプレゼントだった。

 今年6月、環境省は「外来生物法」を施行した。日本の生態系に影響がある外来種を「特定外来生物」に指定し、輸入禁止にしたり飼育に厳しい制限を設ける法律だ。セイヨウオオマルハナバチも指定候補に上っており、来春の指定を前提に研究者らが調査を行っている。指定されれば、セイヨウオオマルハナバチをハウスで使用する場合にネットを張ったり、使用済みの巣箱を適正に処分することが法的に義務づけられる。

 平取町の取り組みは結局、法を先取りしたものとなった。


若者を登録し躍進今年は、作型の変更も決断

 平取町の良い点は若者をどんどん登用する点だと、多くの町民が口を揃える。実際、大崎が36歳でニ代目の部会長になった時は、当日まで本人は推されることを知らず、初代部会長の仲山ら先輩たちに説得されての就任だった。その後は、先輩らの支えあっての6年だった。糸屋も、自分よりも年上の農家が半数を占める中、その協力を得、部会を率いて行かなければならない。

 04年現在、平取町のトマトの販売額は総計27億円、栽培農家は168戸。押しも押されもせぬ大産地である。部会はハチ問題が一段落した今年、思い切って栽培の作型の割合を変えることにした。4月~10月まである収穫のうち、8~10月に収穫できる秋トマトの割合を増やしたのだ。予約相対取引の相手であるスーパーなどに秋トマトの要望が強く、安定供給していくことにした。

 暑い盛りに定植し、秋まで苗の力を残していくには技術がいる。気温の変化にも敏感に対応して、9月からはハウスに暖房を入れなければならず、燃料代が余計にかかる分、リスクも伴う。それでも、トマトの生産量が全国的に増えている以上、チャレンジしなければ生き残れない。

 JA平取町青果課課長の横堤宏之は「市場からの引き合いは今もとても強く、販路も続々と広がっている。生産量を増やして出荷期間を延ばし、供給に応えて行くのが産地の使命だ」と話す。横堤も40歳になったばかり。大崎、糸屋らと共に攻めの農業を体現していく若手の一人だ。

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