ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

農家としての価値観。実業家としての夢

宮崎県中西部を拠点とし、他品目の野菜を栽培する農業生産法人(有)四位農園。自然に逆らわない農法と綿密なスケジュール管理、積極的な試験栽培など、その経営は合理性と創造性に満ちている。社長、四位廣文は集荷事業を通じて販売力を培い、「不足しているもの」を作り続けながら、常に収支にこだわる。そして農家の精神を受け継いだ企業が、永続的に社会に貢献する道を見出そうとする。(秋山 基)
 宮崎県西諸県郡。温暖な気候に恵まれ、遥かに霧島連山を見渡せる山あいの地で、(有)四位農園は企業的な畑作経営を展開している。

 現在の経営面積は約90haに及び、圃場は大小合わせて100カ所近い。それらを年間で平均2.5回転し、主な野菜だけでも10品目以上を生産する。ほぼすべてが外食、生協、そうざいメーカー、飲料会社や冷食会社などとの契約栽培だ。

 作付けから収穫までのシステムは精緻を極める。発注から逆算して育苗から収穫までの計画を立て、商品の出荷時期や用途に合わせて作型を決める。作業の流れや栽培履歴は圃場ごとにデータ化し、日報とともにコンピュータ管理する。

「何も無理はしていません。ただ、努力はしていますけどね」。社長の四位廣文は言う。経営者としては何よりも「収支」をにらみ、年間を通じて、常に作物を出荷し続けられる仕組みを構築してきた。「要するに適地適作。気象をうまく利用して作物を育て、適期収穫を心掛ければいい。自然に逆らわず、当たり前のことを当たり前にやれば、低コストで本物の野菜が出来る。自ずと顧客も付いてくるんですよ」
社長になり実業家として農業をやりたいという夢

 1951年、四位は同県野尻町の専業農家に生まれた。跡取りとして育てられ、農業高校に入学すると、すぐに作業を手伝った。当時は約2haの農地で陸稲とデンプン・焼酎原料用のサツマイモを作り、あとは和牛を飼うという暮らしだった。

 高校卒業を前に、農林省園芸試験場久留米支場の研修生に応募した。教師からは「難しいからやめておけ」と、他の教育機関を勧められたが、四位は聞かなかった。「農業をすることに違和感はなかった。ただ、やるからには自分なりの目標を持ちたかった。世の中はどんどん進んでいるはずだと思っていたから」

 無事合格を果たすと、2年間、試験場で研修を受け、その間に通信教育で商業簿記も身に付ける。「ものを作りながら、どうすれば利益を上げられるか」。農業を事業ととらえるようになったのは、その頃からだと言う。「企業的な農業をしたい。社長になり、実業家として農業をやりたい。そんな夢が芽生えてきた」

関連記事

powered by weblio