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新・農業経営者ルポ

農家としての価値観。実業家としての夢

 かつて農産物を台湾や中国から輸入していたことについて、四位は「先見性はあった」と振り返り、先駆者としての自負を隠そうとはしない。と同時に、生産者として開発輸入に先鞭をつけた過去に対して、複雑な思いも残している。

「いずれにせよ、うちの農業の根底には、あの頃の経験がある。利益を求めながらも、価値観に合わないことはしない。国内で、できるだけ安全なものを作ろうと、考え方が変わった」 実際に中国産野菜の残留農薬問題が表面化したのは2002年前後のことだ。その10年以上前に、四位たちはすでに海外産の集荷事業から撤退し、国内での自社生産へと、大きく舵を切っていた。


今、不足しているものを調べ続けることが活力源

 四位農園が農業生産法人として設立されたのは89年。その後、近隣農家の高齢化や後継者不足を受け、借地と従業員数を増やしていった。集荷事業は徐々に縮小させ、代わりに多品目の契約栽培に乗り出した。「国産」「安全」だけでなく、野菜の「機能」つまり栄養成分にまでこだわった栽培が時代を先取りし、取引先は着々と広がっていく。

 現在ではゴボウ約40ha、サトイモ約20haを栽培し、ホウレンソウは計100ha以上で作っている。その他に、土物ではニンジン、ダイコン、ジャガイモ。葉物はコマツナ、キャベツ、レタスなど。2004年からは枝豆も加えた。

 栽培方法では長年の有機物投入を基本とし、広さも高度差もまちまちな農地で輪作体系を採る。農薬や化学肥料の使用をコスト増ととらえ、使用を極力減らしている。

 また、前作と次作の間をうまくつなぐために重要なのが、スケジュール管理だ。農地と従業員を最大限に活用するには、様々な野菜を計画通り、適期に作る必要がある。

 取材時点の3月初旬、ある圃場ではホウレンソウやニンジンの収穫が急ピッチで進められ、別の畑ではホウレンソウ、ジャガイモの播種が行われていた。さらに別の畑ではゴボウ播種前の深耕作業がされ、育苗ハウスの中では、キャベツの苗が定植の日を待っていた。

 大規模かつ圃場が散在しているため、日程の狂いは経営に大きな影響を与えかねない。「中でも育苗が要」と取締役事業部長の下沖秀人は言う。「農地がもっと集約されていれば、より効率的な農業ができるのにといった悩みもあります。だけど、圃場ごとの状況はだいたい頭に入っている。規模が大きくても、やるべきことは普通の農家と同じですよ」

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