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新・農業経営者ルポ

顧客と向き合い顧客に育てられる経営者

三浦半島で野菜を中心に175aを経営する丸次農園の木村治夫氏は、スーパー、ホテルへの直売と通信販売で、10a当たり売上高200万円を目標としている。高校時代、自分で作ったメロンを一般家庭を訪ねて売り歩いた体験が、直売路線へ向かったきっかけ。その後スーパーへ飛び込み営業をかけ、現在のスタイルができた。自分で値段を付ける経営にこだわる。それには、顧客を知ることが不可欠だと言う。
「平成元年に消費税がスタートしてからこれまで、毎年必ず消費税を納めて来ました」という丸次農園の木村治夫代表。これは3000万円を超える年商をコンスタントにたたき出して来たことを意味する。「つまり、それが小さくとも一つの企業としてある程度社会から認められるラインだと考えている」(木村氏)。 この売上げを維持してきたことが木村氏のプライドであり、これを継続していくことが、自らに課している譲れない目標でもある。

スーパーとホテルに直販群を抜く顧客からの信頼  丸次農園は三浦半島の南端に位置する。経営規模は合計175aで、決して大規模な経営とは言えない。しかも回転数は「2.2回転に達しないぐらい」(木村氏)と、量で稼ぐやり方でもない。この中で10a当たり売上高200万円を具体的な目標に据えている。

 これを実現していく木村氏の戦略は「直売路線で内容重視」、つまり、顔の見える顧客相手にコンスタントに高単価を確保するというものだ。

 主な作目は、ダイコン170a、春キャベツ80a、メロン70a、スイカ30a。

 野菜、果実は、神奈川県と東京西部を中心に42店を展開する、スーパーマーケットの株式会社三和(東京都町田市)が最大の顧客。88年からの取引で、現在は三浦半島の仲間、山崎輝夫氏、鈴木福松氏と3人で「三和三浦グリーン会」を組織して対応している。

 メロンとスイカの最大の顧客はプリンスホテル(西武グループ)。92年からの採用で、現在、鎌倉、大磯、箱根、東京、赤坂、幕張の6カ所のプリンスホテルが使用している。

 メロンは他に通信販売も行っている。「今年は400件以上の注文。まとめ買いの内訳まで見ると500名以上の顧客数で、前年比17%増」(木村氏)と、こちらも好調だ。

 市場、農協への出荷は10年前に2割を切り、現在はゼロ。農協への出荷をしないと決めているわけではないが、顧客への対応で手が回らないというのが実情だ。「スーパーもホテルも、お客さんとは人間と人間の関係。絶対に期待は裏切れない」と語る木村氏の表情には、頼りにされてありがたいという気持ちと、使えないと判断されれば切られて当然という緊張感とがにじむ。

 もとより、顧客からの信頼は厚い。

 三和で、最初に木村氏に会って取引を決めた商品開発本部長安部長春氏は、「うちは地域のたくさんの農家とお付き合いがあるけれども、中でも木村さんはナンバーワン。彼は勉強熱心で意欲と向上心があるチャレンジャー」と絶賛する。

 メロンの採用時から木村氏を知る、株式会社プリンスホテル取締役・東京プリンスホテル総料理長川崎順二氏は、「木村さんのメロンは品物として完璧」と断言する。「糖度が高く味がよい。そして、常に状態のいいものを選んで送ってくれるので、私たちは安心して使える。こういう人はなかなかいない」。

 丸次農園の直売路線は、顧客のこうした一通りのものではない信用と期待に支えられている。

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