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93年大冷害に耐えた有機栽培区に照準
内田氏が農業を始めたのは77年。それまでは鯖江市の基幹産業のメガネフレーム加工業従事していたが、この年入院した父親のピンチヒッターとして実家の4haを耕作した。
以降、稲作の面白さにひかれ、年々圃場を拡大。80年にはミニライスセンターを建設した。
早くからプロとして地域をリードする役割を演じ、地域の共同防除のオペレーターを長年務めてもいた。
ただ、「毎回、防除の翌日に圃場や周辺に大量のカエルがひっくり返って死んでいるのを見てはゾッとしていた」(内田氏)。同じ光景を見て、営農指導員や普及員たちが「よう効いてるねー!」と笑うのに違和感も感じていた。それでも、それだけで共同防除をやめようとは考えなかった。必要だと考えていたからだ。
考えが180度変わったのは、93年の大凶作の時だ。「化学肥料を与えるV字稲作体系の圃場がイモチの巣になった。防除をやってもやっても、次から次へとイモチが出る」(同)悪夢のような状態になった。
一方、この時全作付面積35haのうち17haの圃場で、現在の栽培法につながる有機栽培も行っていた。ところが、こちらの方はイモチも何も出ず、平年並みに取れたのだ。
以来、減農薬有機栽培がリスクが低い栽培法だと考え、独自の体系作りに力を入れてきた。
有機肥料とは、魚のアラなどを原料としたもので、10a当たり30~50kg投入する。「V字稲作のようにある時期に強く効かせるのではなく、地力窒素としてゆっくり効く」(同)点にメリットがあるという。
使用する主な農薬は、パダン(50g/10a)、オリゼメート(500g/10a)。少量を広い面積にムラなく施すため、苗箱施用を行う。「オリゼメートはイモチ対策として。パダンはドロオイムシ対策。弱い虫だが、何年かに一度大発生すると怖い。大発生した時に大量に農薬を撒くよりも、毎年少しずつ撒いておく方が安全と考えている」(同)。
一方、通常これらと併用されることが多い殺虫剤のプリンスは使用しない。「これが、私が93年以来5年かけてたどり着いた答え。これでトンボの世界とホタルの群れを取り戻すことができた」という。
書類が伝えない品質と安全ホタルが証人となる 移植は株間22~23cmの粗植にする。「風通しをよくし、株元まで太陽光を当てることで病気の発生を抑える。10a当たり8俵と減収はするが、薬を使わないで消毒できるメリットは大きい」(内田氏)と考えるからだ。
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内田秀一 ウチダシュウイチ
(有)内田農産
代表
1953年12月生まれ。20代で独立し、メガネフレーム加工業に従事。その後、77年に父親の圃場4haを継承して就農。順次借地を増やし、作付面積を拡大する。91年から有機農法による特別栽培米の増産に着手。96年1月農業生産法人、㈲内田農産を設立し、代表取締役に就任。
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