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新・農業経営者ルポ

「誘惑を牽制する」という名の健全経営


「食べ物づくり」のための技術開発と経営責任

 「今ほど真剣にお客様が安心・安全な食べ物を求める時代はない。秋川牧園は32年間、その準備を続け、今日の安心・安全ニーズに間に合わせることができた」。

 予見した顧客ニーズに先駆けて対応したことで、生協やスーパーへの販売が増大し、農業生産組織として稀にみる規模を誇るに至った。が、時代が秋川氏に追いついた今、次は何を準備しているのか。


研究開発にこそ先行投資する

 2000年、食の宅配専門会社(株)スマイル生活を秋川牧園100%出資で設立。創業5年目で、まだセンターは山口と大阪の2箇所にもかかわらず、すでに会員数約4000人、商品アイテム数500以上、売上は6億円を越えている。宅配事業の理念は、非常に普遍的な言葉に集約されている。

 「よい人生によい食べ物を」

 そのための「食卓から畑までトータルで最高の仕組みづくり」に、スタッフ全員が取り組んでいる。

 進化をつづける秋川氏の経営の根本にあるのは、農業は生産ではなく、「食べ物づくり」業であり、その顧客のために研究・技術開発に先行投資するという考えた方だ。

 数百羽の鶏を飼いはじめた創業当初、飼育数を増やす事を目標とせず、まずチャレンジしたのは完全無農薬・無投薬の養鶏・養鶏卵生産の技術確立だった。そのために、極微量のコクジウム原虫に対する顕微鏡検査技術の開発、一つの農場で一度に同じ日に生まれた鶏を鶏舎に入れる「ワンファーム・ワンロット・シングルエイジ」など、80種類以上の技術開発を行ったという。

 そうした生産技術の後に着手したのは、安全な飼料の開発と飼料原料の調達だ。鶏と豚の全植物性飼料の開発後、卵や若鶏の飼料の60%以上をしめているトウモロコシの残留農薬やポストハーベスト農薬に着目。89年には、アメリカの穀物地帯を視察し、生産農家と信頼関係をつくりながら、ポストハーベスト無農薬コーン(PHF)の独自調達ルートを開拓した。

 そこまで技術や飼料を追求しても、卵を買う消費者は、「無投薬といっても、見た目が同じなのにこれは安全だからと信頼して高いお金を払ってくれるわけではなかった」。消費者にも、同じ生産者にも最初は有機農業運動を通して啓蒙運動を進めるしかなかった。しかし、企業家・秋川実の、多くの有機農業運動家との違いは、技術開発の重視だけではなく、品質管理の徹底と経営組織体に関する独自の発想なのである。

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