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新・農業経営者ルポ

「誘惑を牽制する」という名の健全経営


全量買取・全原料供給のトレーサビリティー

 飼料の調達ルート開拓でも分かる通り、秋川氏の品質管理ポリシーは、徹底した混在の排除である。そのためには、飼料の輸入段階から、生産、ピッキング、加工、流通、販売の全段階で、自社基準を満たさない製品・原料が「絶対に通らない」仕組みづくりが必要だった。そこで、秋川氏が取り組んだのは、生産者間と行った全量製品買取・全量原料供給の取引連動型取引による分別管理だ。

 従来の管理方法について、「日本の流通業発展の歴史は、食品の混在管理の発展だった」と指摘し、「国産外国産、安全基準の高低に関わらず、同じ物流・商流の中で行われてきたことが問題だ」だという。消費者のイメージにあった産地や品質表示で売れば、利ざやが多く稼げる。「安く仕入れて高く売るだけがポリシーの流通業者であれば、それを抑制するシステムは作れない」のだ。


スタッフ平均株式保有額330万円

 産直組織とはいっても、同じ誘惑に駆られることは十分あり得る。秋川牧園のネットワークには多くの生産農家が参加している。例えば、ある生産者の無農薬であるはずの野菜から高濃度の残留農薬がみつかったとしよう。健康志向の農業生産組織として上場しているだけに、企業イメージは失墜する。

 単なる流通業と違い「消費者の命を預かっている『食べ物づくり』の責任感」が重要と断りながら、秋川氏は、最悪の事態を想定しそのリスクを全員が負い、自発的に責任を分担できる経営システムをつくりあげてきた。それは、パートも含めスタッフ全員が株主として出資する経営参加型の仕組みだ。

 株主とはいっても、「金額が多くないと意味がない」といい、事実、役職員(パート含む)の株式保有額が、平均330万円にまで達している。

 そんな事は起こりえないと前置きしながらも、生産者には、「万が一でも農薬や抗生物質などの仕様違反があれば、我が社は潰れる」といっている 

 その話を聞いた生産者は、自分の330万円が紙くずになるリスクを感じ、社員の顔を思い浮かべ、全員の330万円が紙くずになる様子を思い浮かべるのだ。各スタッフに自分の無責任な行為がどんな影響を与えるのかをイメージさせるのが第一段階。そこで植え付けられた経営者意識は、今度は自分が何をすれば会社はよりよくなるのかを考える、「自発的責任感」につながる。

 生産者については、前向きに生産していける見通しがあってこそ、品質と信頼感の向上が生まれる。そのため、再生産の保証と品質基準の統一を図り、他商品との混在を排除するために、生産者との契約は全原料供給・全製品買取となっている。

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