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叶芳和が訪ねる「新世代の挑戦」

米国に学び技術革新と財務 分析で儲かる養豚業に成長 グローバルピッグファーム(株)(群馬県渋川市)

 それを20年かけて日本の市場に合わせて育種し、現在の「和豚もちぶた」の原種豚を完成させた。育種は、米国のアイオワ州立大学やインディアナ州パデュー大学の理論的協力を得た。ただ掛け合わせるだけではなく、全頭を検査して上位5%に残った優秀豚だけを種豚にした。何世代にもわたり選抜を繰り返し、品質を向上させたバラツキのない豚肉を作り出した。もちろん、日本と欧米では背脂肪厚と枝肉の経済的価値が違うので、パデュー大学の協力を得て日本で初めて「統計育種学」の手法を導入し、日本の市場に合わせた育種プログラムを設計した。「和豚もちぶた」は今も進化中である。

 表1は、育種の成果の一例である。経済性の側面を見たものであるが、1980年から2005年に至る25年間で、1日当たり増体量は628kgから793kgに向上した。その結果、出荷するまでの肥育期間が176日から152日に短縮された。約3週間の短縮であり、飼料代と人件費の節約効果は大きい。しかも、出荷体重はかつての112kgから122kgに増えている。(1980年当時は10㎏の増体に2週間要した。つまり、実質5週間も短縮されている)。大変な技術革新である。

 一方、この間、背脂肪の厚さには大きな変化はない(1mm程度の変化)。通常、増体が早まると、背脂肪が厚くなり、市場のニーズに合わない枝肉になる。しかし、「和豚もちぶた」は日本の市場が求める背脂肪を前提にした上で、3週間も増体を早めたのである。まさに選抜を繰り返し品種改良した成果である。現在、日本の養豚の平均的な出荷日齢は190日、出荷体重は115kgであるから、GPFの利益は1頭当たり1500円も高いと推計される。(飼料代、人件費の節約)。

 GPFは育種を重視してきた。統計育種学を修めるため、社員を8年間も米国アイオワ州立大学に留学させた。人的資本への投資である。その成果が上述の利潤を生み出した。


米国式コンサルテーションと戦略的ポークチェーン

 GPFの理念は、家族経営農場を主体にして、多くの消費者に美味しい豚肉を供給することによって、各農家の経営の安定と発展を図ることである。

 注目すべきは、育種に始まり、飼料、生産管理、出荷まで、産業構造の全過程の技術革新をグループ内の一貫したシステムで進めている点だ。強みはデータの蓄積が厚いこと。法人化がメンバーの必須条件だが、これはドンブリ勘定をやめさせ、養豚経営と家計を分離し、経営意識の改革を進めただけではなく、財務諸表の提出を可能にすることにもつながった。

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