記事閲覧
【叶芳和が訪ねる「新世代の挑戦」】
米国に学び技術革新と財務 分析で儲かる養豚業に成長 グローバルピッグファーム(株)(群馬県渋川市)
- 評論家 叶芳和
- 第11回 2007年07月01日
- この記事をPDFで読む
それを20年かけて日本の市場に合わせて育種し、現在の「和豚もちぶた」の原種豚を完成させた。育種は、米国のアイオワ州立大学やインディアナ州パデュー大学の理論的協力を得た。ただ掛け合わせるだけではなく、全頭を検査して上位5%に残った優秀豚だけを種豚にした。何世代にもわたり選抜を繰り返し、品質を向上させたバラツキのない豚肉を作り出した。もちろん、日本と欧米では背脂肪厚と枝肉の経済的価値が違うので、パデュー大学の協力を得て日本で初めて「統計育種学」の手法を導入し、日本の市場に合わせた育種プログラムを設計した。「和豚もちぶた」は今も進化中である。
表1は、育種の成果の一例である。経済性の側面を見たものであるが、1980年から2005年に至る25年間で、1日当たり増体量は628kgから793kgに向上した。その結果、出荷するまでの肥育期間が176日から152日に短縮された。約3週間の短縮であり、飼料代と人件費の節約効果は大きい。しかも、出荷体重はかつての112kgから122kgに増えている。(1980年当時は10㎏の増体に2週間要した。つまり、実質5週間も短縮されている)。大変な技術革新である。
一方、この間、背脂肪の厚さには大きな変化はない(1mm程度の変化)。通常、増体が早まると、背脂肪が厚くなり、市場のニーズに合わない枝肉になる。しかし、「和豚もちぶた」は日本の市場が求める背脂肪を前提にした上で、3週間も増体を早めたのである。まさに選抜を繰り返し品種改良した成果である。現在、日本の養豚の平均的な出荷日齢は190日、出荷体重は115kgであるから、GPFの利益は1頭当たり1500円も高いと推計される。(飼料代、人件費の節約)。
GPFは育種を重視してきた。統計育種学を修めるため、社員を8年間も米国アイオワ州立大学に留学させた。人的資本への投資である。その成果が上述の利潤を生み出した。
GPFの理念は、家族経営農場を主体にして、多くの消費者に美味しい豚肉を供給することによって、各農家の経営の安定と発展を図ることである。
注目すべきは、育種に始まり、飼料、生産管理、出荷まで、産業構造の全過程の技術革新をグループ内の一貫したシステムで進めている点だ。強みはデータの蓄積が厚いこと。法人化がメンバーの必須条件だが、これはドンブリ勘定をやめさせ、養豚経営と家計を分離し、経営意識の改革を進めただけではなく、財務諸表の提出を可能にすることにもつながった。
表1は、育種の成果の一例である。経済性の側面を見たものであるが、1980年から2005年に至る25年間で、1日当たり増体量は628kgから793kgに向上した。その結果、出荷するまでの肥育期間が176日から152日に短縮された。約3週間の短縮であり、飼料代と人件費の節約効果は大きい。しかも、出荷体重はかつての112kgから122kgに増えている。(1980年当時は10㎏の増体に2週間要した。つまり、実質5週間も短縮されている)。大変な技術革新である。
一方、この間、背脂肪の厚さには大きな変化はない(1mm程度の変化)。通常、増体が早まると、背脂肪が厚くなり、市場のニーズに合わない枝肉になる。しかし、「和豚もちぶた」は日本の市場が求める背脂肪を前提にした上で、3週間も増体を早めたのである。まさに選抜を繰り返し品種改良した成果である。現在、日本の養豚の平均的な出荷日齢は190日、出荷体重は115kgであるから、GPFの利益は1頭当たり1500円も高いと推計される。(飼料代、人件費の節約)。
GPFは育種を重視してきた。統計育種学を修めるため、社員を8年間も米国アイオワ州立大学に留学させた。人的資本への投資である。その成果が上述の利潤を生み出した。
米国式コンサルテーションと戦略的ポークチェーン
GPFの理念は、家族経営農場を主体にして、多くの消費者に美味しい豚肉を供給することによって、各農家の経営の安定と発展を図ることである。
注目すべきは、育種に始まり、飼料、生産管理、出荷まで、産業構造の全過程の技術革新をグループ内の一貫したシステムで進めている点だ。強みはデータの蓄積が厚いこと。法人化がメンバーの必須条件だが、これはドンブリ勘定をやめさせ、養豚経営と家計を分離し、経営意識の改革を進めただけではなく、財務諸表の提出を可能にすることにもつながった。
会員の方はここからログイン
叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
叶芳和が訪ねる「新世代の挑戦」
農家は減る一途、そういう中で、地域の農業を維持・発展させる動きがビジネス側から出てきた。借地による規模拡大も容易になった。新しいビジネスモデルが農業の近代化を推進し始めた。商系も農家も新世代の事業家がこれまでにない農業の創造に動いている。
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)