ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

新・農業経営者ルポ

私はまだまだ経営努力が足りていない

 染野が耕作する水田面積は約30ha。うち自作地は5haだ。畑も含めると関係する地権者は500人以上になる。

 「地代は要らないからうちの畑でも作ってくれんかね」と作業をしていると見ず知らずの人から頼まれることも多い。染野の住む地域に限らず、基盤整備されていない畑なら、地代ゼロというのも珍しくはないのかもしれない。麦、陸稲、ジャガイモ、ソバを輪作し、230枚以上、年間に延べで47haに作付けする畑については、染野も地権者の名前がはっきりしない場所もある。地代を貰うより、耕作放棄して役場から草刈をしろと警告を受けるより助かると考える人がほとんどだからだ。しかし、105枚の土地を借りているという水田に関しては、コシヒカリで2俵分をコメかお金で払っている。これからの時代、その地代は借り受ける者にとっては負担にならないだろうか? そう問うと、染野はこう言った。

 「コメを買っていただくお客さんだけでなく、機械屋さんのような取引先や地主さんがいて自分の経営は成り立っている。契約であれば双方にメリットがなければ続かない。人様の所有の水田があって私はコメが作れるのです。もし今の経営環境でこの地代が高いと私が思うとしたら、それは私の経営努力が足りないためだと自らを恥じるべきなのだと思いますよ」

 染野は、年前から乾田直播に取り組んでいる。それを可能にするために水田にプラウを入れ、レーザーレベラを導入した。3年目の今年、スキガラのV溝直播機も導入した。染野はこう言う。

 「コシヒカリの場合、移植では8・5~9俵は獲れますが、直播の場合はまだ平均で8俵に達していません。直播の場合、除草剤代などは慣行より多くなるし、直播するための機械コストも新たに生じる。それでも、労力は40%くらい削減できます。トータルコストとしては少なく見積もっても20%は下がる。さらに、増収こそ最大のコストダウンなわけで、秋田の矢久保さんは乾田直播で14俵も獲っているじゃないですか。自分なんかまだ足元にも及びません。私は農協にはコメを出荷しておらず、高く買っていただける需要先を探す努力はしてきました。そんなことを含めて、地代の高さをぼやくより私はまだまだ経営努力が足りないのだと思っています」

 農地について識者たちは「土地の集積が困難だ」とか「いつ戻せと言われるかも知れない農地では耕作者は投資できない」などと言うが、染野は楽観的な考えを持っている。同世代以下の地域のサラリーマン化した農家の友人たちは「爺ちゃんが止めたら後は頼むよな」と小声で話しかけてくる。それだけでない。自分がこれまで農業経営を続けてきた実感からも、農民根性でする農業ではなく、地権者の利益を考えた農業経営者としてのまともな振る舞いを続ければ、自分に農地は集まってくるという自信があるという。また、生産調整のような農政の制約がそうした状況になることを邪魔しているだけだともいう。

関連記事

powered by weblio