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農水捏造 食料自給率向上の罠

日本の自給率政策のお手本「英国」、自給率向上を国策にしない根拠を発表

 先進国において自給率の低さを食料安全保障と結びつけて危機感を煽る理論は、国際的な協調や繁栄、平和といった精神に反し、保護主義、孤立主義、国家主義を生むだけだ。

 英国の農業政策はすでに、旧来の供給主導型から市場主導型に政策を完全に移行している。以前は、生産するだけで国から収入が得られる政策であったため、農家は作ることだけが仕事でどう売るかは完全に他人まかせであった。こうした供給者論理のなかで農家は、多様で骨の折れるマーケットに向き合うより生産性を上げることに専念していた。生産支持が取り払われた現在、農家は自らがとったリスクを正当化できるよう、十分な見返りが得られるマーケットに対して事業活動を行なっている。供給者といえども農場は現在、ほかの経済活動から遮断された存在ではなく、マーケット主導のフードチェーンに統合されている。この移行により、食料安全保障の焦点は、国内農家と国内農業による食料自給に偏った観点から、小売業者や加工業者をはじめとしたフードチェン全体に当てられるべきである

 事実、現在のわれわれが享受している高度で多様な食品供給レベル=食料安全保障レベルは、国の関与や介入がなくとも、彼らが商業ベースで実現している。その背後にある国内外からの調達、在庫、物流、陳列、販売、補給、決済などすべてだ。

 現実的に問うべきは、フードチェーンが現在実現している食料安全保障上の機能とは何か、である。そして、不測の事態が起きたとき、フードチェーンがどのような機能を果たすのか? それは安全保障度を強化するものか? それとも弱めるものか、吟味しなければならない。つまりは、生産から消費までのフードチェーン全体において、ある事態が起きたときの弾力性、対応力がどれほどあるか? 弱める事態があるとすれば、その場合、政府の介入によってどれほど強化されるのか? それは、国民の便益と負担のバランスが算出できる性質のものなのか?(図3参照)

 同じく、港湾や空港、海上ルート、食品製造拠点、物流手段などを含めた産業、社会インフラの安全・安定性について、見極めていかなければならない。究極的には、英国が食料以上に大きく依存するエネルギー安全保障を向上させることがいちばんの鍵である。石油や天然ガスは、調達源が世界に広がり、民間事業者によってオープンに取引される食料と違い、不安定な国に遍在しており、その取引は国家権益に大きく左右されるからだ。

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