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農業技術進化系

遺伝子組み換え米

  • (独)農業生物資源研究所 遺伝子組換え作物開発センター センター長 高岩文雄
  • 第19回 2008年09月01日

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スギ花粉症患者は日本人の約20%、予備軍(スギ花粉抗原IgEを有しているが発症していない)は約50%で、患者数は増加し続けている。そして、花粉症関連の医療費は毎年約3000億円が費やされている。
医薬品として開発が進むスギ花粉症緩和米 対症療法からアレルギー治療法へ

 スギ花粉症患者は日本人の約20%、予備軍(スギ花粉抗原IgEを有しているが発症していない)は約50%で、患者数は増加し続けている。そして、花粉症関連の医療費は毎年約3000億円が費やされている。

 現在のスギ花粉症の治療は、薬物による対症療法が中心。抗原エキスを用いた皮下注射による減感作療法があるが、アナフィラキシーショックによる副作用や痛み、治療に手間がかかることからこの治療法を選択する患者は極めて少ない。そこで、安全で簡便なアレルギー治療法として、スギ花粉の主要抗原タンパク質(Cryj1、Cryj2)由来の抗原認識に関わるT細胞エピトープペプチドをイネ種子中に高度に蓄積させた花粉症緩和米の開発を進めてきた。

 T細胞エピトープを蓄積させたコメをマウスに経口投与すると、抗原特異的な免疫寛容が誘導される。これにより、IgEやヒスタミン、またくしゃみなどの回数も減る。食べるアレルギーワクチンとして利用できることが示された。マウスとヒト間ではT細胞エピトープ配列が異なることから、ヒト用の7個のT細胞エピトープを連結させた7Crpペプチドを蓄積させたヒト用花粉症緩和米を開発した。7Crpペプチドはイネ種子の胚乳中に特異的に高度に蓄積しており(1粒あたり約50)、他の組織では発現していなかった。一方、食べたときの安全性に関しては、遺伝毒性試験を実施している。普通の非遺伝子組換え米と比較してこれらの調査結果を評価したところ、両者の間で実質的な差異は認められないことから、安全であると判断した。

 もともとは特定保健用食品として開発を目指していたが、2007年3月末に厚生労働省より薬として開発するよう指導を受けた。開発にあたり、コメの剤形では、コメ中に含まれる成分量を均一にできない、穀粒や炊飯米という剤形の医薬品の前例がないなど多くの問題がある。しかし、コメでの経口投与では、胃や腸で精製したペプチドよりも分解されることがなく、腸管の免疫組織に送達させることが可能になる。また、コメの剤形ならば精製に要する費用も削減でき、必要量を多量に供給できるという優位性を備えている。

 今後、遺伝子組み換え体であることから、食品である通常のコメとの混入防止措置を厳密に行なう必要がある。また、コメという剤形が医薬品として認められるかという問題、さらに医薬品としての開発ステップも踏まなければならない。製薬業者の協力も必要であり、実用化には多くの年数を要すると思われる。

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