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農業技術進化系

農薬 希少糖の生理作用を農薬分野に応用 安全性の高い新技術の創成に可能性

三共アグロ農業科学研究所では、希少糖を利用した農薬開発のための試験研究を実施している。これは香川大学農学部、(株)四国総合研究所との共同研究プロジェクトの一つで、基礎から農業場面での実用性確立のための応用を視野に研究を進めている。本プロジェクトは(独)農業・生物系特定産業技術研究機構の2006年度「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」に採用され、06~10年度の5年間に渡り実施される。
 三共アグロ農業科学研究所では、希少糖を利用した農薬開発のための試験研究を実施している。これは香川大学農学部、(株)四国総合研究所との共同研究プロジェクトの一つで、基礎から農業場面での実用性確立のための応用を視野に研究を進めている。本プロジェクトは(独)農業・生物系特定産業技術研究機構の2006年度「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」に採用され、06~10年度の5年間に渡り実施される。

 本研究グループで大量生産に成功した希少糖のいくつかは、植物の生育を抑制したり、病害抵抗性遺伝子の発現を誘導するなどユニークな生理作用を示している。例えば、「D-プシコース」などがイネに対して病害虫防御関連遺伝子の発現誘導や生育調節などの特徴的な作用を示すことが明らかになっている。

 希少糖とは「自然界に存在量が少ない単糖とその誘導体」と定義され、甘味関連産業の成長をもたらしたキシリトールもその一種である。しかし、これまでほとんど全ての希少糖は極めて高価で、生産も不可能であったため、それらの生理作用についての研究は進んでいなかった。近年、香川大学グループにおいてバイオテクノロジーによる全希少糖の大量生産法の確立に成功し、研究への利用が可能になった。

 天然物由来の希少糖を農業場面で利用できるようになれば、環境保全や安全性に優れた新たな農業技術の創成につながる。そして、本研究が進展すれば、農薬としての用途にとどまらず、新たな農業資材の開発に途を拓くものと期待される。また、植物固有の成長過程・生理作用(発芽、成長、開花、結実など)を指令制御しているシステム(伝達系経路)に関しては、未だ解明されていないものも多く、その解明に貢献することも期待でき、学問的にもきわめて楽しみである。

 「希少糖の持つ生理作用の農業場面における実用的利用の可能性を見いだす」ことがこの5カ年計画の着地点だ。遺伝子レベルでいろいろなことが明らかになってきているが、そのことが、農業場面での応用として再現するかどうか、現場での確認と、そのための技術の開発が当面の試験計画である。具体的には、希少糖処理で発現が増減するイネ遺伝子をアレイ解析(DNAレベルでの解析)技術で特定し、これらの遺伝子をイネで過剰発現させて、希少糖に対するイネの反応を担う遺伝子の機能解析を進める。また、自然界に約50種存在する希少糖を順次合成し、その未知の生理作用を明らかにして、耐病性誘導や生育調節用の資材開発とその利用法など、農業上の応用の可能性に関する研究も進めていく。

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