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視点

農業から農産業へ

当社は和歌山を中心とした農産物生産者の営業を代行し、近畿圏や都内のスーパーマーケットにインショップ型直販所「めっけもん広場」を展開している。起業してから1年半、契約生産者は、当初数名から現在500名に及ぶ。
 当社は和歌山を中心とした農産物生産者の営業を代行し、近畿圏や都内のスーパーマーケットにインショップ型直販所「めっけもん広場」を展開している。起業してから1年半、契約生産者は、当初数名から現在500名に及ぶ。

 系統出荷が多くを占める当地において、取引生産者が急増した理由は口コミによるところが大きい。「あの東京から来た兄ちゃん、高い値で売ってくれるらしいで」と言う噂が広まりつつあるのだ。

“儲かる農業”の実現が当社の掲げる目標のひとつである。その仕組みを生産者に提供することが当社の役割であり、標榜することで生産者からそのような声を耳にするのは率直にうれしい。


「できない」という固定観念

 就農前は半導体の営業マンをしていた私の目には、農業現場を取り巻く世界は非常に奇妙に映った。なかでも、何のために農業をしているのか分からない人が多かったことには驚きだった。積極的な理由ではなく、「農家に生まれたから」等、土地を守る手段として農業をしているのである。また農業を通じて仕事に喜びを得ようとする、良い意味での貪欲さを持ち得ていないことも衝撃だった。

 大学生の頃から農業関連の仕事に就くことをずっと切望してきた私は、なんとかこの状況を変えて行きたいと考えた。就農2年目から自ら生産した農産物をスーパーなどに直接販売するルートを確立し、実績を示した。しかしながら、この行動も身近な人にとってさえ奇異に思われていたようである。

 多くの農家は生産のみに精力を注ぐが、農業は、生産だけでなく農産物が生活者の口に入るまでをコーディネートする産業である。自分たちでは実現し得なかった現実や従来農業からの逸脱への恐怖、商業活動を卑しい行為とする思いが「自分にはできない」という固定観念を作り上げ、それが農業発展の障壁になっていると実感した。


突破口を切り開く

 当社が用意したのは生産者が儲けられる“仕組み”である。そのためには店頭に並ぶに値しない農産物は返品または廃棄する。単なる農産物ではなく、「商品」を提供するとの意識改革が功を奏し、生産者自身が“生活者が喜ぶ商品作り”を模索し始めている。結果、予想外のことも起きつつある。当社と付き合いのある生産者が生産や品質管理に前向きになったため、系統出荷の農産物へも良い影響も出ているというのだ。

当社の目標は「持続可能な農産業を実現し、生活者を豊かにする」ことである。そのために、ビジネスとしての農産業を確立し、農業の産業化・構造改革・流通革命を実践しなければならない。その突破口を切り拓く一助となれば願っている。

(まとめ・紺野浩二)

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