記事閲覧
【新・農業経営者ルポ】
自ら選ぶ道、困難も夫婦ならさらに面白し
- 野菜農場叶野 代表 叶野幸衛
- 第59回 2009年05月01日
- この記事をPDFで読む
「そこに山があるから」
山形県鶴岡市(旧表記では東田川郡藤島町)にある叶野幸衛(57歳)は、自宅の玄関先から月山の頂上まで全行程を歩いて登ったことがある。夜中の12時に出発し、頂上に着いたのは夕方の5時。約17時間かかった。雪のない季節ならもっと短時間かもしれないと叶野は言う。庄内農業高校定時制4年の春、スキーにテント、それに数日分の食料など60kgの荷物を背負っての単独行だった。
なぜ、そんなことをしたのかを尋ねると、叶野はとぼけた顔をして、でも少し嬉しそうに言った。
「やって見たかったから」
英国の登山家ジョージ・マロリーが、なぜエベレストを目指すのかを問われて、「そこに山があるから」と答えたという逸話がある。他人から見れば、およそやろうと思わないことに一所懸命になり、そしてそれを達成した者に、人は拍手を贈る。そこに人生のロマンを感じるからだろう。人がこの道と定めた人生を歩むことも、ただ頂上を目指すことと同じなのではあるまいか。経営者になることもまた同じである。
人が経営者として何事かを始めるのは、ただ何事かを実現したいと思えばこそのことである。誰かに頼まれるからではない。ただやりたいからやるのだ。事業である限り利益は必要であるが、彼にとってそれは目的というより、夢の実現のための手段であり、結果に過ぎない。むしろ、そんな強い思いを持つ者であればこそ自ら学び、また、そんな彼には人の助けも与えられるものなのだ。叶野の農業経営者としての人生にはそれが見える。
会員の方はここからログイン

叶野幸衛 カノウコウエイ
野菜農場叶野
代表
山形県生まれ。庄内農業高校の定時制を卒業後、一度は就職。1975年に実家の農業を継ぎ、タバコ作で畑作農家としての人生を始める。その後、約10haの畑でジャガイモ、ニンジンなど畑作野菜の栽培に取り組む。
農業経営者ルポ
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)
