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特集

事業計画書は夢を伝える手段!

(3) 座談会 A-1グランプリを振り返って
事業計画書は 「見せて」磨かれる

 本邦初の農業ビジネスプランコンテストは、農業経営者が事業を通じての夢や目標は他者に対して本気で語りかける絶好の機会であった。本稿では、審査委員を務めた大泉一貫、樫原弘志両氏に同イベント出場者の講評を聞いた。さて、事業計画書をまとめた後に農業者経営者がなすべきこととは何か?


事業計画を他者にプレゼンする絶好の機械に

昆吉則(本誌編集長) 今回の農業ビジネスプランコンテスト・A-1、運営面でつたない部分が多々あったかと思いますが、実際にやってみて良かったなと感じました。応募者である読者からは「自分でビジネスプランをまとめる作業は初めてだったけど勉強になった」といった声も寄せられました。

大泉一貫(宮城大学副学長) 農業経営者がこのイベントを通じて自ら「ビジネスモデルとは何か?」を訴えたことは、非常に大きな意味があったと思います。日本の農業界は3つの呪縛にとらわれています。一次産業は衰退せざるをえない、経営規模が小さくて国際競争がない、家族経営が主流だからダメだという呪縛です。でも、それは間違いだと私は思っています。農家が自分の顧客が誰であるかをきちんと意識し、経営管理を含めた経営手法を導入し、そしてビジネスモデルを確立するという、当然のことを取り入れさえすれば、日本農業は十分やっていけると考えています。その意味でも、このイベントで農家が「ビジネスプランとは何だろう?」ということを知ろうとした経験は生きてくるはずです。

樫原弘志(日本経済新聞編集委員) 私は地方支局に勤務していた頃、地方の中小企業を対象にプレスリリースの作り方講座を開き、情報発信することの重要性を伝えていました。この斬新なイベントを通じて、農業経営者が今どんなことをやっているか、これからやろうとしているかを知るいい機会になったと思います。

昆 それでは、限られた誌面ではありますが、出場者の方のビジネスプランについて、お二人から率直な感想をいただきたいと思います。まずは、(株)農業総合研究所・及川智正氏(和歌山県)による「全国ネットワーク直売所」プランについてです。

大泉 ウェブを活用した物流の仕組み自体はすでにあるわけですが、その裏側にはロジスティックス、つまり物流がある。しかも、全国で広めようとしている意欲は買いたいですね。ただ、全国展開の段階で、それに耐えうるロジスティックスシステムかどうかについては、多少の疑問も感じないわけではなかった。

樫原 百貨店の売り場を狙うとなると、京都にある(株)セントラルフルーツという青果専門店がすでに大手百貨店で展開し、しかも自社農場も持って生産を拡大中です。そこと競合した場合に、「どういった優位性を出していくのかな?」ということは思いました。ただ、1年半で契約生産者を500名も組織した実績は侮れないです。

昆 トップバッターでプレッシャーもあったと思うけど、それを感じさせない彼の元気さ、もっというとハッタリ(笑)は、投資を募る経営者にとって欠かせない資質ですね。

樫原 直売所なら、学生団体SOLAが提案した、東京の廃校を使うアイデアと一緒にやれるんじゃないかとも思ったんですが。

大泉 マンションの屋上庭園で農業をするというアイデア(おもしろ農業代表・山村勝平氏)とも上手く組み合わせたりすると、単独としては弱いけど、コラボすることでより面白いビジネスモデルになると思わせるものがあった。

昆 少人数私募債を提案した(有)グリーンサービス・新國文英氏(福島県)は?

大泉 本人も分析されていたけど、農協に出荷しているために、経常赤字でした。言ってみれば、これまで農政は彼のような大規模稲作経営者を優等生として、そこに補助金を投入してきたわけです。しかし、新國氏はそれでは限界だ、これからは直接資金を募るという点で、一歩進んだと言えるでしょう。ただ、いくら農村あるいは新國氏本人に魅力を感じて投資してくれる人がいたとしても、赤字経営では二の足を踏んでしまいますよ。まずは黒字にすることが先決です。

樫原 私から見ると、消費者から出資を募って農産物で戻すというのは、由布院の牛一頭牧場のようなものを含めて何十年も前から試みがあり、新鮮味が感じられなかったというのが正直な感想です。私募債ではなく、株式会社にして資金を集めた方が責任が明確だと思うし、消費者とのつながりということでも、何か別の形で、インパクトのあることができる可能性はあるはず。

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