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特集

事業計画書は夢を伝える手段!

昆 同じコメでも、乾田直播つがるロマンをミュージシャンの長渕剛とコラボレートするという、ナリミツ農園・成田康平氏(青森県)のプランはどうでした?

大泉 彼の場合、33haと大規模経営ですが、生産調整に頼らず直接販売をしていて経営も黒字だとか。その点をもう少し掘り下げて聞きたかった。

昆 彼の場合、長渕剛の大ファンではあるんだけど、長渕剛が歌っていることと、一粒の種子から育つ乾田直播は、ともに“命”ということで共通するという、その思い入れが若者らしい。若者らしく、論じる前に直接営業に行けよってハッパかけたけど(笑)。

樫原 長渕氏のチャリティに協力するという理念は真面目だし、本人に会うまで、もうひと押しする執念があればなおよかった。ただし、独創性という点では、私は彼に最も高い点数をつけました。

大泉 ビジネスモデルの精度というところに目を向けると、(株)GFD・川本忠氏(静岡県)による省エネ低コストのグリーンハウスを用いたイチゴ生産事業の内容は、なかなかのものだった。ただ、パワーポイントに落とし込むというプレゼンテーションのやり方には工夫の必要があるように思いました。

昆 ちょっと伝わりにくいところはあったかもしれません。

樫原 実際に事業計画書にある数字以上のランニングコストがかかると私は思いました。あくまで直感ですけど。

昆 同じ静岡のふじさん牧場・藤田太一氏による、体験型教育ファームを作るというビジネスプランはいかがでしょう。審査委員の松尾雅彦カルビー(株)相談役は、「孫を連れて行きたい」と言って、非常にアイデアを買ってくださっていましたけど。

樫原 彼は以前、外資系のコンサルティング会社に勤務していたんですよね? とてもそうとは思えないような、言ってみれば“癒し系”のキャラクターというのは、いい意味で裏切りがあっていいですよね。

昆 一方で、プレゼン自体は決して饒舌ではないものの、言わんとしていることを確実に伝えていました。

大泉 体験牧場ということでは、先例としてマザー牧場(千葉県)がありますが、農業の多面的機能という側面、人々が農業に求める“癒し”“再生”を上手く汲んでいたんだビジネスだと思います。

昆 彼らは、農業外から来た人間であることを自覚しています。富士吉田市に移住したのも、その地域の民間企業を再生することで縁ができたそうですから。そういうこともあってか、一流企業を経験した人物が頭の良さを前面に押し出して「何でもやる」というのはよくあるケースですが、そうではなく地域の篤農家とのつながりの中で、いろんなプロジェクトをやろうとしている。いうなればプロデューサーに徹していたのが、ほかにはない視点だと私は評価しました。

大泉 観光と結ぶという考え方は、農業は生産だけでは意味がない、ほかの要素と結び付いて意味を持つ、ということを示唆する事業です。

 国立ファーム(有)・高橋がなり氏のビジネスモデルにしても同じことが言えますが、多くの人の農業に対する興味というのは、農産物そのものではなく、作っている、かかわっている人の魅力、あるいはストーリー性であり、経営者はその要求に対してどう応えてアピールしていくか。それが問われているということでしょう。

昆 高橋がなり氏は、ビジネスプラン以前に、非常に迫力のあるプレゼンをしてくださった。及川氏とも共通しますが、その迫力を審査委員一同評価していましたね。

樫原 ビジネスプランとしては面白いと思います。でも、行なっていることは、美味しい野菜、面白い野菜といった、いわば“いいところ”の上澄みを集めてレストランで提供するということだから、空回りをすることもあるんじゃないかという危惧があります。もし扱っている野菜が、“超ブランド”になったら他社と奪い合いになる可能性があるわけでしょう? 先々その点がネックになるのではないかなと思っています。

 もうひとつ気になる点は、どれだけ野菜をメインにした料理が受けるかということ。私自身の体験で言えば、あるレジャー施設で、やはり野菜をメイン食材に据えたレストランに行ったことがあります。やはり「作り方はこう」とか、店員がいろいろ説明してくださったけど、興味は持てなかった。また料理も「葉っぱばかり食べさせられている」とウンザリしたことも。良かれと思った送り手側のこだわりも、行き過ぎると普通の人がついていけなくなるところに陥ることもあります。つまり、受け手次第で評価が分かれてしまうので、そこは注意が必要では。

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