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【江刺の稲】
『アグリズム』に日本農業の未来がある
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第156回 2009年04月01日
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本号86頁の広告でもご案内の通り、弊社から新たに『Agrizm(アグリズム)』という季刊雑誌が創刊された。全国農業青年クラブ連絡協議会(荻原昌真会長・長野県)が企画し、本誌が発行のお手伝いをしているものである。 その表紙曰く、「農業が身近になる、ファーム・コミュニケーションマガジン」。今回発行の創刊準備号(0号)の特集は「農業で生きる!!~Keep on Farming~」である。
農業紙だけ出なく、各種の新聞雑誌やネット上でも紹介され、従来の農業のイメージを覆す若者雑誌として話題になり始めているようだ。
35歳以下という4Hクラブの基準に合わせた編集内容や誌面構成は、フリーペーパーのそれ。グラフィックデザインを担当したのは、その業界で活躍するデザイナーだそうだ。僕は最初の企画会議段階でわずかに参加しただけで、それ以後は口を挟まないよう心がけた。できあがった誌面を見てそれが良かったと思った。
編集長である荻原さんを始め、若い農業経営者たちが一昨年暮れから打ち合わせを重ね、昨年の夏ごろからは度々集まって弊社のスタッフたちと楽しそうに議論を重ねていた。
荻原編集長を中心に各県の4Hクラブの会長や役員たち、地域を越えた農業を職業として選んだ若者たちが、誰かに指示されたからではなく、自らの意思で、自分たちの言葉で作った雑誌だ。農業を職業として選んだ青年経営者たちの、清々しい明るさと茶目っ気が心地良く、そして、行間に込められた彼らの秘めた意思と熱い思いが溢れている。
新聞等で紹介されてかかってくる電話の様子を聞いていると面白い。4Hクラブ世代の青年だけでなく、農業以外の場にいる若者たちからの反応もある。さらに、農村の高齢者と思しき方からの励ましを込めた注文の電話が少なくないそうだ。身の回りに農業をするそんな若者を見ることが少ないからだろう。
しかし、そんな方々は、送られてきた誌面を見て当惑されるかもしれない。その方あるいは多くの農業関係者が(勝手に)イメージしている「農業青年」あるいは「農業後継者」像と、そこに登場する若者の間には、ギャップがあるかもしれないからだ。
雑誌の登場人物たちは「農業後継者」や「農業の若き担い手」と農業関係者から呼ばれる前に、当たり前な現代の青年なのである。彼らにとって、たまたま選んだ職業が農業なのであり、「家を継いだ」のではなく、自ら仕事や生き方を選んだ青年たちなのだ。頼まれて「農業後継者」や「農業青年」をやっているわけではない。
むしろ、農業後継者だとか農村青年だとかと、おためごかしに農業関係者から持ち上げられることにウンザリしているからこそ、こんな雑誌を企画し、自分たちの本音を同世代の若者や世間に示したいのだと思う。農業関係者によって社会に植えつけられているカビの生えた農業のイメージを払いのけるために。
彼らの思いは本誌の思いでもある。先月号の本誌の「世界の農業長者」という特集。読者のなかには、その内容に違和感を持たれた方もおられるかもしれない。これまでの日本の農業界にはない農業の見方だからだ。でも、それはかつて『農業経営者』というタイトルで雑誌を出した時に農業界の多くの人が感じた違和感と同じことなのである。
そして、彼らこそ日本農業の後継者なのである。
農業紙だけ出なく、各種の新聞雑誌やネット上でも紹介され、従来の農業のイメージを覆す若者雑誌として話題になり始めているようだ。
35歳以下という4Hクラブの基準に合わせた編集内容や誌面構成は、フリーペーパーのそれ。グラフィックデザインを担当したのは、その業界で活躍するデザイナーだそうだ。僕は最初の企画会議段階でわずかに参加しただけで、それ以後は口を挟まないよう心がけた。できあがった誌面を見てそれが良かったと思った。
編集長である荻原さんを始め、若い農業経営者たちが一昨年暮れから打ち合わせを重ね、昨年の夏ごろからは度々集まって弊社のスタッフたちと楽しそうに議論を重ねていた。
荻原編集長を中心に各県の4Hクラブの会長や役員たち、地域を越えた農業を職業として選んだ若者たちが、誰かに指示されたからではなく、自らの意思で、自分たちの言葉で作った雑誌だ。農業を職業として選んだ青年経営者たちの、清々しい明るさと茶目っ気が心地良く、そして、行間に込められた彼らの秘めた意思と熱い思いが溢れている。
新聞等で紹介されてかかってくる電話の様子を聞いていると面白い。4Hクラブ世代の青年だけでなく、農業以外の場にいる若者たちからの反応もある。さらに、農村の高齢者と思しき方からの励ましを込めた注文の電話が少なくないそうだ。身の回りに農業をするそんな若者を見ることが少ないからだろう。
しかし、そんな方々は、送られてきた誌面を見て当惑されるかもしれない。その方あるいは多くの農業関係者が(勝手に)イメージしている「農業青年」あるいは「農業後継者」像と、そこに登場する若者の間には、ギャップがあるかもしれないからだ。
雑誌の登場人物たちは「農業後継者」や「農業の若き担い手」と農業関係者から呼ばれる前に、当たり前な現代の青年なのである。彼らにとって、たまたま選んだ職業が農業なのであり、「家を継いだ」のではなく、自ら仕事や生き方を選んだ青年たちなのだ。頼まれて「農業後継者」や「農業青年」をやっているわけではない。
むしろ、農業後継者だとか農村青年だとかと、おためごかしに農業関係者から持ち上げられることにウンザリしているからこそ、こんな雑誌を企画し、自分たちの本音を同世代の若者や世間に示したいのだと思う。農業関係者によって社会に植えつけられているカビの生えた農業のイメージを払いのけるために。
彼らの思いは本誌の思いでもある。先月号の本誌の「世界の農業長者」という特集。読者のなかには、その内容に違和感を持たれた方もおられるかもしれない。これまでの日本の農業界にはない農業の見方だからだ。でも、それはかつて『農業経営者』というタイトルで雑誌を出した時に農業界の多くの人が感じた違和感と同じことなのである。
そして、彼らこそ日本農業の後継者なのである。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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