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新・農業経営者ルポ

目線の揃う需要者との連携こそが食文化を守る

 木村の話を聞いて、筆者はまったくその通りだと思った。

 コメには約800%もの関税に相当する保護政策があるのに対して、野菜類に関しては有効なセーフティーネットすらない。筆者もコメを含めて自国の農業を守るためには一定の保護、あるいは大津波のように流入する輸入品によって国産が圧迫を受けるような場合には、最低限のセーフティーネットがあってしかるべきだと考えている。国内農家の自助努力を前提にしながら。現状の厳しい環境のなかにある日本の野菜農家は、あらゆる生産資材や人件費が高いわが国の条件を考えると、良く健闘しているというべきだろう。同時にそれは、国産の農産物に対する消費者の支持によっても助けられている。

 しかし、食の職人や食産業の経営者たちが料理に対する美意識や食文化へのこだわりを捨ててしまえば、はじかみのような高級食材は消え去ってしまうのだ。


適地適作と伝統の栽培技術

 木村は、真紅の色合いと香りを持つ最高品質の金時ショウガを作るために、根ショウガの生産に適した土と人を探した。父親の代からである。現在も根ショウガは静岡県や三重県の農家に生産委託をしている。委託しているのは、優れた土作りや栽培管理のできる農家たちだ。土質を選び、優れた生産者を探し、そして施肥の基準や栽培指導を続けた。しかもショウガは連作を嫌い、一度作った畑では7~8年は間を空けないと障害が出る。委託する農家の多くは長年の付き合いだ。それだけに委託農家の高齢化も深刻だと木村は言う。それだけ限られた条件に合う場所と人に委託する根ショウガの価格は高い。しかも、ひとつの根から2~3本のはじかみしか取れない。さらに出荷品質を維持するために、色合いや太さなどにより厳しく選別することから、ニンニクなど以上に種代にかかるコストは大きいものになる。

 この地域というより、木村農園固有のはじかみ生産の施設もまた特殊である。ハウスのなかに地面を掘り込み、軟化栽培の室にしてある。コンクリートで囲った室の底に電熱線を通して加温する。温度は季節や気温に合わせて調節する。そのために温湯ではなく、微妙に温度を変えられるニクロム線での加温である。1度、2度の差が品質にかかわるという。それだけに、周年生産が可能になっているとはいえ、毎月管理方法が変わるのだ。通年で栽培が可能になったのは、冷蔵庫で根ショウガを貯蔵し、根ショウガを休眠状態に置くことができるようになってからのことである。

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