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新・農業経営者ルポ

オレたち、第一次産業のワンダーランドを作りたい

東京都内に2店舗出店するなど、直売所ビジネスでトップを走る藤代弘之。かつて「ヤンチャやってました(笑)」と臆面もなく語る彼は、父親の死を契機に、本格的に農業経営に乗り出す。だが農業の世界は、彼の目からはおかしなことだらけに映った。そこで「やってやろうじゃないか」という生来の反骨精神が藤代の生き方を変え、今日の経営の基礎を作る。経営者でありながらも、農業者としての誇りを決して忘れない藤代が、今見ているものとは。
 高橋尚子が走ったという佐倉の農道では、菜の花が春の訪れを告げていた。一面に広がる田畑の背後には、めっきりと緑を深めた丘陵が肩を並べる。稜線の切れ間から降り注ぐ暖かく優しい陽光が、目に眩しい。

 藤代弘之氏が経営する直売所「グリーブ」の駐車場にクルマを滑り込ませたのは、昼食時間をだいぶ過ぎた午後1時も回った頃だった。

「あら? みっちゃんのトマトは入荷してないのかしら……」

 野菜売り場で物色中の主婦が、誰に問いかけるでもなく肩をすくめた。古傷の左足を引きずって前へ踏み出した藤代氏が軽く頭を下げる。

「すみません。もう売り切れちゃったんですよ」「グリーブ」の初代店舗を設立したのは96年だ。その後、遠方の顧客にも対応するため、千葉や東京にも直営店を作った。出荷者からは20%の手数料を取るが、入会金や会費は一切ない。いまや全体の年商は5億円にもなるという。「ヤンチャだった」20代の頃には想像だにしていなかったビジネスに発展していた。

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