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新・農業経営者ルポ

オレたち、第一次産業のワンダーランドを作りたい

「商社や銀行という名のハゲタカが、空の上からじっと眺めてますよ。それで弱った生産者を見つけては、空から降りてきてパクッと食らいつく。すると、それまで全員で相談しながら決定していたものが、トップダウン方式で簡単に決まってしまう。同時に、農作物の価格がどんどん落ちていくでしょう。あと5年もすれば、かなりの数の農業者がフェイドアウトしていくと思いますよ。世代交代と重なりますからね」

「アグリ稲庭」の資材置き場にある河津桜が、ピンク色の蕾を広げようとしていた。この精米所で精製されたコシヒカリは、付近の学校給食にも安価で供給されているという。

「今から洗脳してるんですよ(笑)。子どものころに出会った美味しいものは、大人になってからも追い求めようとするものだからね」

ただひとつ農業者よ、決起せよ

 ある日のことだ。流通の人間を指導するコンサルトとの会話で、藤代氏は怒りを通り越して思わず笑ってしまったそうだ。

「生産と販売もやってるなんて、藤代さんも中途半端な人だね」

「仕方ないですよ。地域の農業を守ろうなんて国は言ってるけど、明るい未来が見えないじゃないですか」

コンサルトも頷く。

「たしかに。農業者が減っていくのは間違いないよ」

「ウチみたいに法人でやってるところも続けられなくなりますよね」

「当然だよ」

 予想通りの返答だったが、藤代氏はがっかりした。

「じゃあ、どうすればいいんですか」

「あなたたちは生産する技術やノウハウを持ってるじゃないの。いわば技術者だよ」

「技術者」という言葉が、耳に心地よく響く。将来、企業に取り込まれるようなことになっても、技術者としての職が待っているのかもしれない。だがコンサルトの次の返答で、錯覚だったことに気づかされた。

「我われにはどんな技術者としての可能性が残されてるんですか」

「簡単にいえば、労働者だよ」

 舌打ちする気持ちを悟られないように、藤代氏が再び訊く。

「先生は、日本の将来が心配になることはないんですか」

 コンサルトは意地の悪い笑みを浮かべながら答えた。

「そのころにはオレは死んじまうだろ。だから関係ねぇんだよ」

 このひと言に藤代氏は決意を新たにした。「絶対に闘うしかない」と。

 アメリカのファーマーズ・マーケットの視察旅行で、「スチューレオナード」(Stew Leonard's)という食品スーパーを訪れたことがある。牧場をイメージしたこの店が、アメリカでは大変な人気なんだという。たとえばある地域に開店すると、彼らの客を狙った百貨店がコバンザメのように付近に建つほどだ。

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