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【農・業界】
愛知・豊田市の農業特区 「遊休農地活用」のはずが、耕作地借り上げ?
- 編集部
- 2004年04月01日
賃借者に不安感 市、地権者に相場の2.5倍の借地料を提示
愛知県と豊田市が申請中の構造改革特区を巡り、地元に不安感が広がっている。特区の目的は遊休農地の活用と企業退職者の就農支援などだが、事業推進のために市が準備を進めている研修農場の予定地には耕作地が含まれ、地権者と借地契約を結んでいる専業農家もいる。市は用地確保のため、通常の2.5倍もの借地料を地権者に提示しており、実際に耕作している生産者の間からは「このままでは、市に借地を取り上げられるのではないか」といった声も聞かれる。
【●定年退職者と遊休地を結び付ける特区】
問題となっているのは「農ライフ創生特区」。今年1月、愛知県と豊田市が連名で申請した。特区の範囲は同市内の農業振興地域で、「事業は市が中心に進め、県は就農希望者の研修などでの側面支援を予定している」(県農業振興課)。
豊田市のまとめによると、同市では、自動車関連企業に勤める団塊の世代が今後、続々と定年を迎え、数年後には年間2000~3000人のペースで退職していく。一方、農家の高齢化や後継者不足から、市内には耕作放棄地と不作付地を合わせると、約700haの遊休農地がある。
このため、市はJAあいち豊田と共同で「営農支援センター(仮称)」を設置。併設される研修農場で新規就農希望者などに技術を指導するほか、修了者には遊休農地を仲介し、新たな担い手の確保や市民の生きがい対策に役立てる方針だという。
【●研修農場は「耕作地」に】
問題はこの研修農場だ。計画では、農場の予定区域は、営農支援センターを置くJA関連施設の北側約4.3ha。愛知環状鉄道四郷駅からほど近く、複数の地権者が農地を所有している。このうち約1haは地権者らが自ら耕作するか、一部は遊休地化しており、市が農場建設のために借り上げることがほぼ決まった。
しかし、残りの約3haは、地元の生産者たちが借地として利用してきた。市産業部農林課は「耕作を続けてきた人たちから土地を横取りするつもりはない。地権者と耕作者の間で結んだ契約の更新時期が来てから、3者で話し合いたい」と語るが、すでに地権者側には予定区域内の農地をすべて借り上げる意思を伝えている。
しかもその借地料については、現地で通常支払われている10aあたり年間1万円を大幅に上回る「年間2万5000円」を地権者に提示。その結果、地権者から「賃貸契約を解約してもらうかもしれない」と告げられた耕作者もいる。
ある耕作者は「農地の貸借は地権者との信頼関係が基本。地権者から解約してくれと言われれば、無理には契約を続行できない」と言う。また、相場より高い借地料についても「他の借地契約にも影響が出るのではないか」と心配そうに話す。
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