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編集長インタビュー

農薬の登録制度を合理化し、食の安全確保と農業の発展を両立せよ

生産と利用の両方が農林水産省によって管理されている農薬業界は、官主導のハイコストな農薬登録制度から抜け出せないままでいる。食の安全の名のもとに、合理化がなおざりにされたシステムは、天下りの温床を作り出し、農薬価格の上昇という形で農家を圧迫している。農業資材審議会の会長ならびに同農薬分科会の会長を務め、10年間に渡って農薬登録問題の現場に携った本山直樹氏に、登録制度の現状と、時代に即した新システム導入の意義を聞いた。

農薬の分析コストが天下り先の収入源に

昆吉則(本誌編集長) 私は一昨年から内閣府の規制改革会議に参加しております。そこで農薬問題についての参考意見をうかがおうと農薬工業会の方をお呼びしたこともあるのですが、歯切れのいいコメントはなかなか聞けないんですね。農薬業界の不幸は、生産と利用の両方が農水省に管理されていることだと思います。業界の方々が個人として本音で語ることと、工業会として発言できることというのは、微妙に変わってきてしまうんですね。研究者の場合も自由な立場になりにくいのではないかとお察ししますが、本山先生が『今月の農業』の最終号で農業資材審議会の舞台裏を赤裸々に紹介されていたのは印象的でした。

本山直樹(東京農業大学客員教授) 言いたいことはたくさんあったのですが、遠慮したほうです(笑)。私が審議会の委員になったのはちょうど10年前でしたが、入ってみてびっくりしました。当時は農薬の登録変更など、農業資材に関する重要事項を審議していたのですが、進行を見ていると台本の棒読みなんですよ。

昆 そのなかで先生が「こんなものを適用拡大するのはおかしいじゃないか」と発言したら、大騒ぎになってしまったわけですね。

本山 ええ。審議会といっても、役所の書いたシナリオ通りに承認される仕組みになっていて、そのときも本当に安全かどうかの科学的な議論はできなかったということです。

昆 そういう整合性のないことが行なわれていたわけですね。

 ところで乱暴な言い方になるかもしれませんが、そもそも農薬取締法とは、戦後間もない頃、粗悪品の農薬を追放するためにできたものですよね。その後、農薬業界も進化して農薬取締法の持つ意味も変わってきたと思いますが、少なくとも登録された農薬においては、粗悪品はなくなってきたのではないでしょうか。それでも制度として薬効試験のようなものが残っていることに、私は疑問を感じています。農薬メーカーの登録コストが高くなるがゆえに登録件数が減るとしたら、国民にとってもマイナスだという気がするのですが、いかがでしょうか。

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