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農水捏造 食料自給率向上の罠

豪州の日本研究センター専門家は10年前に自給率政策の問題点を論破していた!

 日本の政策立案者は食安保を強化するという名目のもとに、利害関係者を利する政策を推進する。パートタイム農家に所得を再分配する次の5点セットの政策ツールだ。1高関税による輸入規制2国家貿易3生産調整による価格支持4機械・資材への補助金5農地へのインフラ投資。その成果が、競争力のない国内生産の増大と高い農産物価格である。

 これは食安保の第一の受益者であるはずの国民に被害を与えるものである。食安保の目標は、基本法によれば、国民への食料の「合理的な価格での提供」と「安定的な供給」である。高価格の維持政策はその真逆をいく。とくに低所得者は高い食費の影響を受けやすく、そのほかのモノやサービスに対する購買力を減少させる。社会的な弱者にとっては、本当に食安保を侵されかねない。

 基本法では、食安保のために国内生産の増大による自給率目標を盛り込んでいるが、自給率は国策による供給で決まるものではない。市場の需要によって決まるものだ。いくら増産しようと消費者が買わない価格では、需要が輸入農産物に向かい自給率は下がる。当然の成り行きだ。それでも政策当局は高価格を維持したまま、日本農業が供給するコメのような伝統食に対する需要を挽回しようと予算を割いてキャンペーンをする。同時に政策立案者は、自給率向上は政策目標といいながら、政策によって実現できないことを自ら認識している。

 これまで政策立案者が食安保という非経済的な政策を実行できたのは、過去30年間の好景気の時代、消費者や有力な輸出業界が食料の高価格に対し強く抗議しなかったためだ。しかし、時代は深刻な不況になり(浅川注:バブル崩壊後の失われた10年に言及)、失業率は上がり、所得の低下が起こり、高い食品価格は国民にとって悩みの種になっている。日本の消費者はコメについては国際価格の6倍、牛乳は4倍、小麦は2倍もする価格で購入しなければならない。そして、そのどこに妥当性があるのか、疑問を抱きはじめている。不況下において、他産業の苦境を差し置き、農家だけが高価格から利益を得るのを世間は好ましく思わないだろう。農業改革に対する要求が増加し、いずれは政治的な変革を促進する。今がこの農業改革を強く求める最良のタイミングである。

 多くの国民は、食料自給率向上はつかみどころのない非現実的な目標だと感じ始めている。1993年の不作の際、主食であるコメの自給に失敗し、最後の手段として輸入に頼ることとなった。非難すべきはコメの生産量を制限し、剰余を防いできた既存の減反政策である。当時、計画的に生産能力に対する25%の減産を国が実施した。このため価格は高騰し、この伝統的な食品に対する消費者需要は減少した。

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