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坂上隆の幸せを見える化する農業ビジネス

そのアイディアは信念に基づいているか

 そうならないために私は二つのことを心がけている。

 ひとつめは、自身を離れたところから客観的にみる姿勢を持つことだ。準備や作業に没頭する自分とは別の醒めた目で見つめる自分を持つ。別の目とはゲームの対戦相手(取引先)、それを観戦する観客(顧客)の視線と同化することといってもいい。そんなことが可能だと意識するだけで随分違う。「自己満足ではいけない」という戒めになるし、勝負の全体像を掌握して今をとらえられる。

 もうひとつ、肝心なことは、そのアイディアが信念に基づいたものかどうかを絶えず問うことだ。そこに「自分がやらなければ誰がやる」という突き動かされる思いがあるかどうか。アイディアであれば、最終的に実現しなくても「このプロジェクト、アイディアが悪かったねえ」と言い訳もできる。しかし信念を問えば、「これは信念が悪かったんだ」とは決してならない。良い信念も悪い信念もない。自分の行動の基礎となる心が問われているからだ。すなわち、信念とは「本気でやる」ことである。アイディア倒れするように“信念倒れ”することはない。


相反する二つを両立

 現在、私は「価格・品質面から世界基準で真に競争力のある飼料を、国際相場で一喜一憂している畜産農家に対して提供したい」という信念を持っている。それでは国内市場を席巻している輸入飼料を上回る、絶対的にいい飼料を作るにはどうすればいいか。

 まず自分よりもいい飼料を低コストで作っているかもしれない海外産の飼料、これが輸入される前のコストや産地状況を世界規模で把握しなければならない。海外生産者の庭先価格、輸出業者のマージン、国際物流費、関税がどうなっているのか。日本の輸入業者がどう関わっているか、世界的な相場がどう形成されているかを調べている。飼料製造法についても、国際基準で先進的な技術を吸収する。これがいわゆる準備段階だ。そこを知った上で、輸入飼料よりもっといいものを顧客が喜ぶ価格で作れるかどうかを考える。

 醒めた目で、調査と行動に費やす時間配分も予め決めてしまう。1年を自らの納期と費やすリソースに定め、基礎調査に20%、視察先選定に10%。視察に30%、実際のアクションに40%という風にだ。準備段階でのめりこんでしまったら、ビジネス・アイディアを証明することが自己目的化し、「あの国も調べよう、いやこの国も調べないと」と延々続けて基礎調査で1年が終わってしまいかねない。

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