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新・農業経営者ルポ

「私は楽になりたい」という生き方が創る農業経営

 その年の冬に、開墾した茶畑に150本のブルーベリーを植える。ブルーベリーの摘み取り園の開園を目指してだ。果樹は成園になるまで年数はかかるが、それが野口の計画した「農家であること」という事業経営だった。

 翌年からは、人に頼んでいた水田も自分でやるようになる。それならと近隣の農家に水田を託され、野口の水田耕作は1・6haになった。

 コメの半分は業者に出荷し、残りは、自分で売る無農薬自然乾燥米、黒米、赤米、餅米等。お客さんの要望と自らの労力不足を補うためもあって、お客さんに農作業を手伝ってもらうことも求める。顧客サービスの一環でもある。

 近所の人から乾燥機を5万円で売ってもらい、それにコンバインがオマケで付いてきた。乾燥機はすぐに壊れたが、コンバインはコメ卸に売る約80aの稲の収穫に使っている。残りの半分はバインダー刈りでハザ掛けにするのは、果樹のマルチに使う必要もあるが、様々な品種をわずかずつ作る野口にとっては、コンバインではむしろ手間取る。脱穀に使う自走式脱穀機は40年モノ。精米機とトラクタだけは買ったが、販売用のコメを貯蔵する冷蔵庫は自作し、田植え機は三軒共有。

 農業機械の導入はわずかであるが、野口の作業場兼納屋の屋根にはソーラー発電のパネルが並んでいる。安い買い物ではない。でも、ソーラーパネルを並べた納屋の天井に野生のミツバチが巣を作っているような農家。そんな農家の暮らしにこそ人々の求める現代の農家像がある。そして野口の知識と言葉。そんな生き方や暮らしに触れようとして人々は集まってくる。

 現在の農業からの収入は約300万円。そのほとんどはコメとブルーベリーでの売上。コメは卸への販売とお客さんへの販売。そのほかはわずかの野菜や加工品を自宅の納屋や直売所で売る。ブルーベリーはまだ若木で収量は限られる。

 野口が住む我孫子市街。すでに住宅が建て込むようになり、ほとんどは非農家。地域の人々だけでなく遠方からも野口を訪ね、ネットで注文をしてくる。人々は、ブルーベリーの摘み取りや稲刈り、あるいは野口夫妻とひと時を過ごし、そこにある安らぎを求めにくる。

 野口がする宣伝らしい宣伝といえば、ブルーベリーの摘み取り開始を伝えるホームページ。それも、花囲夢(カイム)と名付けた農園のホームページよりも、野口自身のプライベートを語るブログを通して人々は集まってくる。お客さんやメディアの紹介。野口の商売っ気のない丁寧な説明が、さらに顧客の好感に繋がる。

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