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農水捏造 食料自給率向上の罠

飼料用米補助金、納税者負担は肉1kg当たり1600円。いつまで払い続けますか?

「減反維持」と「選挙対策」のためのバラマキ予算が制定された。米国産トウモロコシ飼料価格の約7倍のコストをかけて国産餌米を作るという。今年度、飼料用・米粉用米に割り当てられた補助金は1572億円。需要の見込みはない。
 あるテレビ番組で、「自給率向上のための飼料用米向け補助金についてどう思うか」という主旨で取材を受けた。

 こう答えておいた。

「あなたは夕飯に奮発して1000円の和牛を子供達に食べさせたいと思っている。スーパーの店先で価格と向き合い、やはり節約しようとやめた。しかし実は、その肉の餌米を田んぼでつくるのに、キロ当たり1600円をコメ農家に払っている。あなたの納めている税金からです。自分が食べられないもののために、知らないところで払わされているお金。これが自給率を上げるための、飼料用米向け補助金です」 農業メディアでは単に「自給率向上のために、水田で飼料用のコメを作った農家への補助金を10a当たり8万円支給」と報じられる政策を、一般視聴者の立場に立って、論旨を置き換えて説明した。

 メディアはこれまで農水省の発表に沿って、“低い”自給率を喧伝し、昨年の“食料危機”説と相まって国民の不安を煽ってきた。ここにきて筆者のような自給率政策・廃止論者に取材がきたところを見ると、ようやく風向きも変わってきたのだろうか。“自給率40%!”連呼の加熱報道も一段落し、冷静な番組づくりも見られるようになってきた。

 全国メディアの記者やディレクターらが、これまで農水見解を鵜呑みにしてきた自給率に関して、素朴な疑問を抱きはじめてきたのだ。

「どれだけ上がったら安心なのか」「国民はいったいどれだけのコストを負担しなければならないのか」

 自給率向上は国策であり、数値目標がある以上は政府、農水省は国民にそのコストとメリットを国民に明らかにする義務がある。

 しかし、農水省の公式見解はあいまいさを残したままだ。

「食料自給率が向上すれば、食料の安定供給に関する安心度が高まると考えられる」(筆者の「自給率が平成27年度に45%になると、国民にとってどんなメリットがあるのか」という質問に対する、農水省食料安全保障課の回答)「考えられる」程度のメリットで莫大なコスト(3025億円。2009年度の食料自給率向上に向けた総合対策予算)をどう説明するのか。「基本法において、食料自給率目標については、生産、消費それぞれの面での課題が解決された場合に実現される目標値(筆者注:平成27年の自給率目標45%)として定められている。この目標を達成するための政府のコストについては、関係者がそれぞれどれだけ努力するかによる面もあり示していない」(同「自給率45%にするためのコストはいかほどか」に対する同課の回答) 要は、自給率向上のコスト、メリットの双方とも農水省は示せないというのだ。

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