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土門「辛」聞

やはり起きていた集落営農組織の矛盾

「家計を預かる奥さんは、農協、減反、集落営農と関わりを持てば、家計に響くと思っています。ご主人を集まりに送り出すと、見栄を張るのかどうかは知りませんが、行政や農協の方針に唯々諾々と従うので、業を煮やした奥さんがご主人を押しのけて顔を出して、行政や農協のやり方に釘を刺しているようです」

 もはや集落営農の「失敗」は包み隠せなくなってきた。率先して集落営農に取り組んだ岩手県までもが、農業研究センターが昨年8月に公表した「集落営農組織の現状と展開方向」と題する文書で、「組織の維持や経営展開は難しい状況」とはっきりと認めてきたのである。

「多くの集落営農組織では、『構成員個々が、自ら所有する機械を使い所有水田の作業を行っている』など、個別経営の営農形態を踏襲したまま、経理事務のみを一元化した形式で運営されている。このため、組織化によるコスト削減・省力化効果が現れず、組織の維持や経営展開は難しい状況」

 気になったのは「経理事務のみを一元化した形式で運営」との記述部である。この文言から推測できるのは、従前通りに自分の農機具で農作業をやるのに、収穫したコメは、飯米を残して全量、農協出荷を義務づけられ、販売代金は集落営農組織に入り、そこで農協に支払う資材費や手数料、集落営農の維持運営費を差し引かれるということである。

 ようやく冒頭で紹介した「田圃の異変」の原因がつかめてきた。岩手の農家は、農協と集落営農にがんじがらめにさせられて窒息一歩寸前との状況に置かれているということである。嫌気がさした兼業農家は、急速にコメ作りの意欲を失い、田圃でハンストまがいの抵抗運動を展開しているようでもあるのだ。


高齢農家に大型機械を扱う能力があるのか

「集落営農組織」は品目横断経営安定対策が導入された平成19年度から本格的にスタートした。もう3年も経過しているのに、農水省はきちんとした政策評価を下していない。担当課に政策評価の有無はと質問しても、都道府県別の設立数だけが返ってくるだけだ。組織数だけを示し、集落営農組織に大きな問題はないという弁明のようである。「肝心なのは、数でなくて中身だ」と質問を放つと、急に黙り込むのである。 先の岩手県農業研究センターの文書には、「個別経営から組織化へ移行すれば、コスト削減と省力化効果を発揮できる」と総括した部分がある。残念ながら、そのような期待は太陽を西から待つに等しいことである。組織化が絶望的に難しい理由を述べよう。

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