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土門「辛」聞

やはり起きていた集落営農組織の矛盾

 組織化は、小型農機による個別経営から脱却し、大型農機などを導入して一部の担い手層が農作業を担当することを意味する。最大のネックは、農家の経済力や栽培技術が、農作業の大規模機械化についていけないことだ。

 具体例を示そう。例えば30戸が参加する30ha規模の集落営農組織。トラクター、田植機、作業機、コンバイン、乾燥調整機などをフルセットで揃えた場合、農機具庫を含めざっと8000万円はかかる。補助金(半額)を使っても4000万円は参加農家が負担することになる。1戸あたり100万円以上の負担金となる。Aさんの解説はこうだ。

「勤務先のリストラなどで、生活費を工面するのも覚束ないのに、集落営農組織を維持するためということで、新たに借金を背負いますか」 これを裏付けるのが、地元農機具商の証言。「最近、集落営農組織から中古の農機具の修理がよく持ち込まれます。大型農機を導入して組織化を図りたいが、兼業先収入の極度の落ち込みで組織に参加した農家の了解が得られず、年期ものの農業機械の修理を持ち込んでくるのです」。

 万が一、組織化のため機械を揃えたとしても、肝心のオペレーター役が不在。集落営農組織の構成メンバーは、大多数が60代。なかには70代というのも珍しくもない。高齢農家が、大型農機を操縦することは体力的にかなり難しい。

 勤務先でリストラに遭遇した若者をオペレーターに迎えることもあるが、彼らに給料を支払えば、農家への品目横断的経営安定対策(助成金)の分け前が減る結果を招く。

 助成金の分け前が減れば、当然、農家は生活防衛のため組織から脱退していく。岩手県内の老人クラブの集まりや病院の待合室で、地代の品定めが始まってきたというのは、その予兆のようなものである。

 Aさんが伝える「田圃の異変」は、どうやら岩手県だけの特異現象のようである。だが集落営農組織の矛盾はこれ以外にもあり、政府が大胆な政策転換を図らねば、岩手のような「田圃の異変」が全国に及んでいくにように思えてならない。

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