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【江刺の稲】
今年も冷害の様子ですが……
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第161回 2009年08月01日
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どうも今年は冷害の被害が出そうである。7月9日から北海道の旭川・富良野地区を訪ね、末の今、岩手の滝沢村にいる。 北海道土を考える会、および東北土を考える会に参加のためである。そこで北海道、東北地区の読者の皆さまとお目にかかった。
北海道では、旭川空港に着陸する前、上空から麦と思しき黄色い畑の色がまばらに見える。着陸後、畑に行ってみると、どこも麦が所々ベッタリと倒伏している。株元から折れており、回復は難しそうに見えた。
地元の読者たちに聞くと、今年は雨が多く、日照が少ない。筆者が行く前日には集中豪雨で多くの麦が倒伏したという。 数日前、麦の神様とも言われる北海道栗山町の勝部征矢氏に「もう刈れてますか?」と電話をしたら、「うちはまだだけど、周りの畑を見ると、“刈れる”ではなく“枯れる”だね。こりゃあ今年は大変だよ」という返事だった。
さらに、上富良野でのイベントに丘珠空港からセスナを自ら操縦して会場の「土の館」に現れた長沼のヒール宮井氏に24日に電話してみると、うちも今日の昼頃から収穫してみようと思っているという。様子を聞くと、例の口調で、「今年の北海道の麦はほとんど全滅状態じゃないの? 土を考える会の後も、さらに雨、日照不足、低音が続き、ひどいもんですよ。倒伏は昆さんが見た頃よりさらにひどくなっているし、穂発芽、赤カビなどの多発。我が家だってどうなるか分かりませんよ、今年は」と言う。憎まれ口のヒール宮井氏にしても妙に弱気だ。さらに、宮井氏は続ける。
「上富良野で、皆、畑は悪いけど水稲はあまり影響を受けていないと話していたでしょう。でも、その後の気象がひどく、僕は作ってないけど、稲も相当被害を受けますよ」
宮井氏が操縦するセスナに同乗してきた南幌の大舘国昭氏に聞くと、「稲はまだ出穂前でよくわからないけど、幼穂形成期の低温は不稔の原因になる。この数日の温度次第でしょう。うちの麦は今日から刈り始めたけど、幸いにも問題ありません。周りの畑では、赤カビ、穂発芽、倒伏など惨憺たるものです。これこそ施肥と防除の仕方いかんが大きく響きます。カニ目ノズルを使う人が多いけど、そのせいもあるのじゃないかな。数年前にも同じような天候だったのですが、自分はその年、水稲は晩生の品種を中心にしたのと、作業が遅れて成長が遅かったことが幸いして、問題がなかったんですよ。でも、今年は、うちの稲も今が幼穂形成期だから心配。それにしても麦も稲も管理や施肥次第で人の差は出ますよ」
岩手に来て、青森、岩手の話を聞くと、北海道ほど深刻な話は聞かない。でも、まともな管理をしていない多くの農家の場合、被害が出るだろうと口々に言う。
平成5年の冷害時は品種も、箱処理剤のような技術もなかった。数年前に東北での冷害被害を過剰に受けたと騒ぎ立てた人のことを、本誌は「駄農だからだろう」と切って捨てたことがある。
なぜなら、農業である限り天候の被害を受けることは避けられない。しかし、平成5年のヤマセ地帯でも、平年作とはいかないまでもまずまずの成果を挙げた読者はたくさんいた。
冷害年にこそ、人による差が出るものだ。同じ地域で取れてる人がいるのに、自らの怠慢を棚に上げて被害者面をする農民にはそろそろご退場願おう。
北海道では、旭川空港に着陸する前、上空から麦と思しき黄色い畑の色がまばらに見える。着陸後、畑に行ってみると、どこも麦が所々ベッタリと倒伏している。株元から折れており、回復は難しそうに見えた。
地元の読者たちに聞くと、今年は雨が多く、日照が少ない。筆者が行く前日には集中豪雨で多くの麦が倒伏したという。 数日前、麦の神様とも言われる北海道栗山町の勝部征矢氏に「もう刈れてますか?」と電話をしたら、「うちはまだだけど、周りの畑を見ると、“刈れる”ではなく“枯れる”だね。こりゃあ今年は大変だよ」という返事だった。
さらに、上富良野でのイベントに丘珠空港からセスナを自ら操縦して会場の「土の館」に現れた長沼のヒール宮井氏に24日に電話してみると、うちも今日の昼頃から収穫してみようと思っているという。様子を聞くと、例の口調で、「今年の北海道の麦はほとんど全滅状態じゃないの? 土を考える会の後も、さらに雨、日照不足、低音が続き、ひどいもんですよ。倒伏は昆さんが見た頃よりさらにひどくなっているし、穂発芽、赤カビなどの多発。我が家だってどうなるか分かりませんよ、今年は」と言う。憎まれ口のヒール宮井氏にしても妙に弱気だ。さらに、宮井氏は続ける。
「上富良野で、皆、畑は悪いけど水稲はあまり影響を受けていないと話していたでしょう。でも、その後の気象がひどく、僕は作ってないけど、稲も相当被害を受けますよ」
宮井氏が操縦するセスナに同乗してきた南幌の大舘国昭氏に聞くと、「稲はまだ出穂前でよくわからないけど、幼穂形成期の低温は不稔の原因になる。この数日の温度次第でしょう。うちの麦は今日から刈り始めたけど、幸いにも問題ありません。周りの畑では、赤カビ、穂発芽、倒伏など惨憺たるものです。これこそ施肥と防除の仕方いかんが大きく響きます。カニ目ノズルを使う人が多いけど、そのせいもあるのじゃないかな。数年前にも同じような天候だったのですが、自分はその年、水稲は晩生の品種を中心にしたのと、作業が遅れて成長が遅かったことが幸いして、問題がなかったんですよ。でも、今年は、うちの稲も今が幼穂形成期だから心配。それにしても麦も稲も管理や施肥次第で人の差は出ますよ」
岩手に来て、青森、岩手の話を聞くと、北海道ほど深刻な話は聞かない。でも、まともな管理をしていない多くの農家の場合、被害が出るだろうと口々に言う。
平成5年の冷害時は品種も、箱処理剤のような技術もなかった。数年前に東北での冷害被害を過剰に受けたと騒ぎ立てた人のことを、本誌は「駄農だからだろう」と切って捨てたことがある。
なぜなら、農業である限り天候の被害を受けることは避けられない。しかし、平成5年のヤマセ地帯でも、平年作とはいかないまでもまずまずの成果を挙げた読者はたくさんいた。
冷害年にこそ、人による差が出るものだ。同じ地域で取れてる人がいるのに、自らの怠慢を棚に上げて被害者面をする農民にはそろそろご退場願おう。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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