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エコファーム・アサノ 脳業発想力

有機がうまい保証なんてねぇ 肥料よりもドラマを与えろ

 だって、今俺が栽培しているニンジンにしたって、アフガン原産だよ。アフガンなんてどう見たって豊かな土地なんかねえだろ? ということは、もともとニンジンなんて栄養いらねえってことなんだよ。そうすっと肥料やらないで栽培してみようってことになるじゃん。収量はたしかに落ちるけど、何もしなくてもすごい濃厚な味になるんだよ。それをシェフに出すとみんな驚くね。こっちはその反応を待ってましただから、そんなときにこう言うわけ。「じゃあシェフ、野菜と野草はどこが違うの?」ってね。

 でもよ、うちに視察にくる農家は土づくりのノウハウを知りたいわけだから、こんなこと言っても「それじゃ困ります」って言うんだよ。こっちだって困るよな。

 で、俺はミネラルの重要性を言っている。人体が病気になるのは、ミネラルバランスが崩れたとき。これは俺の勝手な解釈だけど、野菜だって同じなんだよ。だから俺は海洋性のミネラルを畑に入れている。

 たとえばカキ殻石灰なんていいよ。あれは安いし、入れても害がない。きっとあれにはカルシウム以外にも重要なものがいっぱいあるんだよ。カキ殻の形を見てごらんよ。二枚貝と違ってザラザラだろ? あの複雑なザラザラにいろんな海の成分がくっついているんだよ。だけど、俺がそれをいくら言ったって、俺は土壌の専門家じゃねえから「バカなこと言ってらあ」ってことになる。「普通の苦土石灰のほうが安くていいじゃないですか」とか言うんだよな。まあ勝手にしたらいいけどよ。

 作物ってのは「作る」んじゃなくて、「できる」んだよ。あとはその作物をいかに商品にしてやるかってこと。ただの作物なんて農家なら日本中の誰もができるけど、みんな商品が作れないんだ。レストランと取引している俺の場合は、どうやってシェフ、ひいては食べる人を満足させるかだね。料理にはドラマが必要なんだけど、そのときにしかるべき語りや背景があれば、それはドラマになる。野菜の魅力も大事だけど、それを扱う自分自身が商品になって、ドラマを発信することも忘れたらいけねえよ。

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