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木内博一の和のマネジメントと郷の精神

副業のすすめ

主業=副業

  こうした事業を始めると、「面白い副業始めましたね」と言われるが、自分の中で副業という意識はない。言うなれば、手がける事業の全部が主業で、全部が副業だと思っている。

 主業と副業をはっきり分ける会社は、デメリットが多い。主業、副業のそれぞれに人件費がかかるため、本部は運営費が高くなる。そのため和郷園はその二つを分け隔てない。一人の社員が店舗販売を担当していて、もしその店舗の売れ行きが悪ければ仕入や生産の現場をやってもらうし、その逆もある。極端な例になると、和郷園にいながら他社とかけ持ちして働く社員もいる。要は、主業か副業かにとらわれず、それぞれが毎日、価値を生みだすことに専念するのだ。

 主業だけに磨きをかける時代は終わった気がする。広く考えてみれば、あらゆる資源は山か海にしかないわけで、多くの産業はその出口が違うだけのことだ。主業に特化するとは出口をひとつしか持たないことだといえる。そしてその出口は時代時代で絶えず変わっている。


モノ余りの時代

 日本のトップメーカーと呼ばれる企業が苦戦しているように、ナンバーワンの出口を持っていても経営が順調にいくとは限らない。それよりも出口を柔軟にして、ひとつの出口の出が悪い時は他の出口が使える状態にしておけば、常に新しい経営資源になる。支柱のひとつが倒れても他の柱が支えればいいのだ。

 今は不景気だという。景気が悪くても、専門性に特化した企業は強いと言われてきた。しかし、事はもうそのように単純ではない。農産物をはじめ、素材・原料産業において、供給が需要を上回っているのだ。コメだけではなく野菜も果物も、モノ余りなのだ。これは1985年のプラザ合意以後の変化で、これからもずっと続く。モノが足りないときは作れば作るほど売れた。所得も増えた。生産性も上がった。だが、売れない時代においては、人件費がビジネスのネックになる。

 大切な社員に支払う給与が事業のネックになるような産業に未来はない。これを解消する道はただひとつ。1つの出口、1個の価値にこだわらない柔軟性を持つことだ。農業も原料にビジネスを限定するから、農家農村に閉塞感が生まれてしまう。事業を生産に限定せず、作る人、加工する人、売る人、食べる人、農を楽しむ人の5タイプに関われる体制にしていく。リサイクルを加えれば、6つだ。社員の一人一人がその6分野で価値を高めることができれば、どんな経済状況でも、農業で所得を増やしていくことができる。

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