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新・農業経営者ルポ

地域を味方につける、サービス業としての農業

 かくて翌年、3組の夫婦によって農事組合法人桧の目新田生産組合が設立される(桧の目新田は集落名)。現在のグリーンサービスの前身だ。

 「いやぁ、最初はまわりの人からさんざん馬鹿にされましたよ。『農家の息子でさえ跡継がないのに、誰がやるんだ?』とか、『給与なんて払えるわけねぇだろ?』とか」

 なんとか船出を果たした農事組合法人だが、前途は多難だった。ライスセンターの処理能力に見合った作業面積の確保をしなければならない。黒字を出すには、それが前提条件だった。まずは作業受託と利用権設定を増やすため、新國さんたちが最初に行ったのが、情報収集だった。

 「近隣の農家に飛び込み営業をかけるだけでなく、酒屋やタバコ屋をまわっては『あそこの親父さんは体を壊して仕事ができずに困ってる』なんていう情報を聞き出すわけです」

 いわばネガティブ情報を収集して、その当事者から作業受託をしたり、農地を借りたりするわけだから、相手次第では「人の弱みにつけ込んで」と受け取られかねない。

 だが、新國さんたちは、周囲との軋轢を起こすことなく規模拡大を達成している。その秘訣はいったい何だったのだろうか?


相手が望む満足を提供して自分の利益を確保する

 新國さんはこの問いに対して、「デモンストレーションとサービス」というふたつの言葉を返した。

 「たとえば稲が全部倒れている田圃でも、デモンストレーションのつもりで喜んで作業受託をするわけです。コンバインで稲刈りするには、倒れた稲を手作業で立て直さなくてはなりませんが、そんな手間のかかることを徹底的にやった。そうするとギャラリーが集まってくるんですね。そして、『あそこに頼むとここまでやってくれるんだなぁ』と噂が広まる。その結果、作業ができないで困っている農家から次々に仕事が舞い込んでくることになりました」

 今でいえば口コミマーケティングだが、委託者に一切作業をさせなかったことも、批判をかわす大きな要因になった。

 「従来の作業受託の場合、『稲刈りの前に倒れて刈りづらいところは手直しをしておいてくれ』などと、委託者に条件を出したり、作業の一部を手伝わせるのが普通でした。つまり、受託者側に『やってやる』という意識が強かった。でも、我われは委託者に一切仕事をさせなかった。委託者は、あくまでも仕事をくださるお客様だと考えました」

 また、利用権設定においても、新國さんたちは、まったく新しいパラダイムを持ち込んでいる。

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