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【土門「辛」聞】
唖然!新潟コシばかりが政府買入される裏事情
- 土門剛
- 第33回 2007年03月01日
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政府買入れ入札を巡る農水省VS全農の無責任ぶりを、米穀業界の専門紙「ライス・ビジネス」1月1日号が「疑惑の政府買入入札」の見出しで「特定産地に多大利益」「新政策と大きく矛盾」と指摘した。
「歪んだ政府買入れが行なわれている。本来なら政府買入れする必要のない新潟コシヒカリが大量に買入される一方で、新潟と生産量がほとんど同等の北海道からは一俵も買入れされない。これは銘柄別需要や流通実績などの理論的裏付けとはほとんど関係ない、農水省と全農の『政治的』談合による産物と見られる。(中略)他の産地の多くが不落となる中で、何故新潟コシだけが全量落札なのか。これは全農の全国政策と大きく関係があるようだ。公正であるべき政府買入れは、全農の全国政策に大きく影響されている」
その入札結果(左頁)をご覧あれ。「新潟コシヒカリ」と「秋田あきたこまち」の落札数量が突出して目立つ。総合食料局計画課の担当者に「これは新潟コシヒカリと秋田あきたこまちの政治救済だな」と直感的印象を伝えたら、「政府米の買入れは公明正大。買付けルールも然るべき委員会で決めてもらったもの」と公式見解を披瀝。それでも疑念ありと指摘したら、同紙の記事を「あれはガセ」と尋常ならざるコメントを発した。
プロなら、一読判然、これは「イカサマ・ルール」であることはすぐ見抜ける。「ガセと言うなら、いかなる根拠と計算式で買入れをしたのか証拠を示せ」と迫ったら、待ってましたとばかりに出してきたのが「平成18年産米の政府米買入れの考え方」なるA4ペーパー2枚。その中の「設定要素」が買付けルールのことである。
政府米買入れ。食管時代から胡散臭い話は耳にタコができるほど聞かされていた。そんなこともあって米政策改革大綱はガラス張りのルールにした。平成15年7月、農林水産事務次官名で発出された「依命通知」には、デタラメはやめようという固い決意のほどが滲み出ている。
「コメの政府買入れについては、回転備蓄の適正かつ円滑な運営を図るとともに、市場のシグナルが反映され、生産現場における需要に見合った売れるコメづくりを促進するため、平成16年産米から移行した入札方式により買い入れるシステムについて、更に改善を図る」
イカサマかどうか。ジャッジする物差しは、この「依命通知」の趣旨に、買付けルールが沿っているかどうかを判断すればよい。その前に「依命通知」の中身に目を通しておこう。「回転備蓄」というのは、買入れた米を一定期間後に市場で売却する仕組み。それには確実に売れる米を買入れることが条件となる。
16年産ルールはシンプルかつ明瞭。「出回数量比」が80%、「過去の政府買入実績数量比」20%。前者に重きを置いたのは、スムーズな「回転備蓄」を考慮してのことだ。しかも売れない産地で政府米の常連組にも配慮している。米政策改革大綱の精神を反映したルール設定である。
これぞまさにイカサマ!18年産米買い入れルール
「歪んだ政府買入れが行なわれている。本来なら政府買入れする必要のない新潟コシヒカリが大量に買入される一方で、新潟と生産量がほとんど同等の北海道からは一俵も買入れされない。これは銘柄別需要や流通実績などの理論的裏付けとはほとんど関係ない、農水省と全農の『政治的』談合による産物と見られる。(中略)他の産地の多くが不落となる中で、何故新潟コシだけが全量落札なのか。これは全農の全国政策と大きく関係があるようだ。公正であるべき政府買入れは、全農の全国政策に大きく影響されている」
その入札結果(左頁)をご覧あれ。「新潟コシヒカリ」と「秋田あきたこまち」の落札数量が突出して目立つ。総合食料局計画課の担当者に「これは新潟コシヒカリと秋田あきたこまちの政治救済だな」と直感的印象を伝えたら、「政府米の買入れは公明正大。買付けルールも然るべき委員会で決めてもらったもの」と公式見解を披瀝。それでも疑念ありと指摘したら、同紙の記事を「あれはガセ」と尋常ならざるコメントを発した。
プロなら、一読判然、これは「イカサマ・ルール」であることはすぐ見抜ける。「ガセと言うなら、いかなる根拠と計算式で買入れをしたのか証拠を示せ」と迫ったら、待ってましたとばかりに出してきたのが「平成18年産米の政府米買入れの考え方」なるA4ペーパー2枚。その中の「設定要素」が買付けルールのことである。
政府米買入れ。食管時代から胡散臭い話は耳にタコができるほど聞かされていた。そんなこともあって米政策改革大綱はガラス張りのルールにした。平成15年7月、農林水産事務次官名で発出された「依命通知」には、デタラメはやめようという固い決意のほどが滲み出ている。
「コメの政府買入れについては、回転備蓄の適正かつ円滑な運営を図るとともに、市場のシグナルが反映され、生産現場における需要に見合った売れるコメづくりを促進するため、平成16年産米から移行した入札方式により買い入れるシステムについて、更に改善を図る」
イカサマかどうか。ジャッジする物差しは、この「依命通知」の趣旨に、買付けルールが沿っているかどうかを判断すればよい。その前に「依命通知」の中身に目を通しておこう。「回転備蓄」というのは、買入れた米を一定期間後に市場で売却する仕組み。それには確実に売れる米を買入れることが条件となる。
16年産ルールはシンプルかつ明瞭。「出回数量比」が80%、「過去の政府買入実績数量比」20%。前者に重きを置いたのは、スムーズな「回転備蓄」を考慮してのことだ。しかも売れない産地で政府米の常連組にも配慮している。米政策改革大綱の精神を反映したルール設定である。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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