ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農・業界

米穀新聞社・熊野孝文記者特別寄稿、中国に日本のコメを売り込め

  • 2007年01月01日
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
日本米の中国への輸出解禁が秒読み段階になっている。海外へ新たな販路が開かれようとしている今、国内のコメ農家はどんな策を考えるべきなのであろうか。
新潟コシヒカリはステータスシンボルになるか?

 日本米の中国への輸出解禁が秒読み段階になっている。海外へ新たな販路が開かれようとしている今、国内のコメ農家はどんな策を考えるべきなのであろうか。

 2006年11月、都内のホテルで、東北の農協組合幹部3名と代議士秘書官、それに米卸の社長による会食会が開催された。会食の目的は消費地のコメ情勢について卸の意見を聞くというものであったが、同時にコメの需要拡大についての議論も展開された。その中のひとつに、あきたこまちを香港で売り出そうというプランがあった。

 「海外への日本米の輸出」、世界一おいしい日本のコメが世界の食卓にのぼれば、コメの在庫処分に頭を悩ますこともなくなる。

 農水省もコメの輸出には大変熱心で、輸出がコメの需要拡大に寄与するという観点から、消費純増策として生産者の取り組みを支援している。農水省がまとめた資料には、2005年度にアジア各都市で生産者団体がコメの販売活動を行なったのか、こと細かく記してある。事例として台湾、香港、シンガポール、タイが挙げられているが、いずれの地区でも必ず新潟コシヒカリが販売されている。

 新潟県はいち早く「新潟米輸出協議会」を設立し、コメ輸出に積極的に取り組んでおり、2005年11月9日から19日にかけて、台湾の三越で開催された大新潟物産展でも魚沼コシヒカリや新潟コシヒカリを販売した。

 輸出協議会関係者は「台湾では以前島根県のコシヒカリが先行して販売されていたが、我々が物産展で新潟コシヒカリを販売するようになってから、常時新潟コシヒカリを置いてもらえるようになった」と語る。ただし、台湾への年間輸出量は20tに過ぎず、手放しで喜べる状況ではない。協議会では「台湾の人口は5000万人ほどだが、上海は周辺を含めると3億人にもなるので、是非上海で新潟コシヒカリを販売したい」とし、着々と新潟コシヒカリの輸出準備を始めている。ここでも農水省が音頭をとって「高品質で安全、安心な日本産品を世界へ」と題し、天津、上海、バンコク、クアラルンプール、シンガポールの5都市に常設店を構え、日本の農産物を販売できる施策を始めた。

 このほか、農水省は商社やコメ加工食品業界まで幅広く海外に向けてコメを輸出できないかアンケートを実施、盛んにコメを輸出するように働きかけている。安倍総理が国会で2013年までに日本の農林水産物や食品の輸出を1兆円にすると言っていることもあり、農水省としても張り切らないわけにはいかない。

 しかし現在、日本米の輸出実績は2005年度で750t、2006年度も4~9月で501tに過ぎない。

 最も輸出量が多いのが台湾で、全体の3分の2を占めている。台湾へはいち早く日本のコンビニが進出したのだから、物産展で日本米を販売するより、コンビニの弁当やおにぎりに日本米を使用すれば、飛躍的に輸出量が増えるはずである。ところが実際は、現地で生産されたコメが使用されており、現地のコンビニ関係者は「日本のコメを使用するのは採算的に無理」とにべもない。たしかに採算を考えると、現地のコメ価格の2倍以上もする日本米はとても使えないのだろう。

 ただ、まったく商業ベースで日本米が台湾へ輸出できないのかというとそうでもない。あまり知られていないが、沖縄のコメ卸が台湾へ日本米を輸出した例もある。

 この沖縄の米卸は、コメにウコンなどをコーティングする技術を埼玉県の精米機メーカーと共同開発し、健康米シリーズとして沖縄県内で贈答用として販売していたところ、台湾の漢方会社が気に入って、漢方米として輸入販売することになった。しかし、やはり価格の高さがネックになってこのビジネスは尻すぼみになってしまった。

 では、アジア各都市で幅広く日本食レストランを展開している外食企業はどうか?ある企業のオーナーは、タイの日本食レストランで日本米を使用することを考えていたが、ここでも価格がネックになり、結局、オーストラリアからコシヒカリを輸入して使うことになった。また、シンガポールなど日本資本の量販店でコメを販売している商社は、コシヒカリやあきたこまちはべトナムやタイ、中国で契約栽培したコメを3国間取引で輸入販売している。

 世界一おいしいコシヒカリは、日本で生産されたものではなく、アジア各国で生産されたものが販売されている。この現実をどう受けとめ、中国への輸出展開を図るべきか、糠喜びに終わらせないための取り組みが望まれるところだ。(米穀新聞社・熊野孝文)

関連記事

powered by weblio