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【土門レポート2001農と食産業の“時々刻々”】
拡大版 農業経営所得安定対策には期待するな
- 土門剛
- 第12回 2001年04月01日
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この人が言い出しっぺでなければ、これだけ世論の批判が出なかったのかもしれないのが、政府が導入を前提に検討作業に入った「新たな農業経営所得安定対策」(以下、安定対策)である。この人とは、農水副大臣の松岡利勝氏(自民党、熊本3区選出)のことだ。
価格保証から農家の所得補てんへ。米国やEUではそのような動きらしい。WTO(世界貿易機関)農業交渉でも焦点となるテーマの一つである。いずれはこの方向に向かうのかと思うことがあっても、今回の安定対策に双手を挙げて賛成というわけにはいかない。すべては言い出しっぺの松岡氏の日ごろの言動ぶりにある。これはどうみても選挙目当ての不純の動機で言い出してきたとしか思えない。
たとえ安定対策の導入が必要だとしても何も急ぐことはない。まず既存の制度との整理をつけねばなるまい。それに税金の投入もある。納税者の理解も得なければなるまい。また安易に税金を投入すれば農業者がモラルハザード(倫理の欠如)を引き起こすという問題もある。この種の制度は万策を尽くして、それでもなお足らざる時にのみ、導入を検討すべき政策テーマである。政治は、その万策をいまだ尽くしていない。これが筆者の見解だ。
価格保証から農家の所得補てんへ。米国やEUではそのような動きらしい。WTO(世界貿易機関)農業交渉でも焦点となるテーマの一つである。いずれはこの方向に向かうのかと思うことがあっても、今回の安定対策に双手を挙げて賛成というわけにはいかない。すべては言い出しっぺの松岡氏の日ごろの言動ぶりにある。これはどうみても選挙目当ての不純の動機で言い出してきたとしか思えない。
たとえ安定対策の導入が必要だとしても何も急ぐことはない。まず既存の制度との整理をつけねばなるまい。それに税金の投入もある。納税者の理解も得なければなるまい。また安易に税金を投入すれば農業者がモラルハザード(倫理の欠如)を引き起こすという問題もある。この種の制度は万策を尽くして、それでもなお足らざる時にのみ、導入を検討すべき政策テーマである。政治は、その万策をいまだ尽くしていない。これが筆者の見解だ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門レポート 農と食産業の“時々刻々”
新しい歴史が始まる。夜明けを前に、すでに万全の身支度を済ませている者、覚悟の朝に今跳ね起きようとしている者、目を覚ましながらも名残惜し気に布団の温もりから脱することのできぬ者、そして、いまだ惰眠をむさぼり続ける者。改めるに遅いということは無い。さあ起きだそう。奮い立とう。 わが国の産業と農業そして日本人が、避けられぬ選択としてグローバルスタンダードを認めつつも、誇りある地位を保ち続けるために、土門剛氏に既に決せられた改革の方向性の中で、2001年に向けた“時々刻々”の展開をレポートしていただく。
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