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【今年の市場相場を読む】
輸入増の品目を見る タマネギ・ネギ・ミニトマト・生シイタケ
- (株)農経企画情報センター 代表取締役 小林 彰一
- 第58回 2001年04月01日
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タマネギ 輸入が増えても入荷は減少 流通形態や販売方式が変化
【概況】
タマネギの輸入は、昨年は全体で17%増えたが、東京市場では31%増、国産の入荷も2%増えている。本質的な原因としては、入荷の半分以上を占める北海道産が6%も減少したためであるが、これは平成11年の大幅減を受けての入荷増という意味合いが強く、これだけ増えても、まだ平成8~9年の水準には達していないのである。輸入品の大幅増は、国産の減少を補ってもまだ足りないという状況であった。しかし、それでも単価の安い輸入品が増えることで、平均キロ単価は71円と低迷した。
【背景】
タマネギという品目は、家庭用としても業務用としても必需品である。しかもその需要は安定しており、それゆえに業務用などでは減少したら代替品目がないだけに高騰、混乱する。そういう意味からすると、平成11年の減少(3%減)にもかかわらず、単価は81円と平年価格より弱く、高騰した前年からすると2割も安くなったし、12年は入荷が増えたとはいえさらに安くなり、近年では最低の価格となった。タマネギの流通が変化していることを裏付けるものである。
【今後の対応】
タマネギの輸入販売に、ひとつの変化が見え出した。これまでタマネギの輸入は、国内の一定需要に対して、国産の作柄の豊凶に応じ、国産で足りない量が輸入されていた。だから、30万トンの年もあれば、3万トンしか輸入されなかった年もある。もちろん、その基調には現在でも変化はないのだが、「それ以上の輸入」が見られるようになってきている。基本的にタマネギの単価は高くない。それでもそれ以上に安く仕入れたい、販売価格は変えないが、仕入れ価格を下げることで少しでも利益を確保したいという感覚の小売店や業務用需要が増えてきたことであり、輸入品の直接対応も出始めたということだ。府県産のタマネギの中には食味を訴求できるものもあり、静岡、千葉などは出始めの新タマネギを「サラダ・タマネギ」という新しい切り口の商材として売り出すなどの差別化戦略も見られ、これが小売店に歓迎される一方で、道産を始めとする一般的なタマネギは、輸入タマネギに容易に代替される。価格が安い分、それを内部的には「利益商材」としようとする動きだ。一般的なタマネギは、出荷すれば売れるという状況ではなく、特別栽培などの「わけあり」や、品種訴求、地場の訴求などをしないかぎり、輸入物に切り替わってしまうという、厳しい環境に置かれるようになっている。「デフレスパイラル」を地でいくような動きである。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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