ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

第二章 貸借と損益を見る心構えとその捉え方

自立の道を覚悟する

新年が幕を開け、帳簿と格闘している読者も多いことと思う。私はアベノミクスによりインフレが進むことを予想し、かなり新たな投資(買い物)をしたので、少々不安なひと月を過ごした。経営会計の原稿を書きながらも、自らは入るを計れず、出を制することができないのではないかと……。
経営者2年目の不安はさておき、今年の気になる3つの話題について冒頭に整理しておきたい。
一つ目は我が国の財政が逼迫していること。桁が一般人の扱う金銭感覚と異なるが、兆円単位の国債総額、1年の国家予算の半分を負債財源に頼る日本国は、状況極めて悪しである。受け取る年金を当てにしてはいけないと、教えてくれる報道番組への感謝は絶えない。税金は値上げしても、政府は経済効果の低い産業への投資を渋る。農業投資はどこの先進国でも、経済効果が低いものである。EU諸国をお手本にした農業政策へのシフトは、本当に期待しているのだが、農水省の予算は、このままでは減額が予想される。
次に気になるのは、TPP交渉の行方だ。我が国の農業が厳しいのではなく、貿易問題が国内の農産物価格に転嫁される方向に決着するように思えてならない。だが、国際相場に準ずるようになれば、(1)価格では国際競争力が求められ、(2)国内農産物の市場は狭められて競争が激化し、(3)変化する市場への適応が、これまで以上に迫られる。
最後に心配なのが、異常気象である。日本のモンスーン気候は本来、穀類・飼料作物生産に不向きである。気象災害が増加傾向にあり、際どい生産を今後も強いられるであろう。
どうやら日本の農業が置かれている経営環境は厳しさを増し、各々が自立を覚悟しなければいけない時代のようだ。漠然とこれまで同様の生産では、取り残されてしまう。必ず儲かるという品目は存在しない。将来を見通していかねばと、新たな自覚も当然必要だ。
こんなときこそ、経営者の手腕は問われる。帳簿を分析し、計画を練ることは何遍でもできる。農業経営者にとって、冬は脳を使う繁忙期と言えよう。正念場か土壇場か。経営の現状をしっかり捉えていかなければならない。

複式簿記を知らずには
語れない

大昔の物々交換の時代には、会計は存在しなかった。貨幣が生まれ、会計が誕生した。会計の記述ルールである簿記は、ある日、誰かが突然発明したものではない。長い文明の歴史を経て、日常生活でお金が物やサービスと交換され、それを生業とする経営者に必要とされたからこそ、記録方法が発達したのだ。
北海道では、昭和初期の恐慌と大冷害による凶作が重なり、農家経済はどん底にあったので、自立再建運動の一環として農業簿記の普及が進められた。この頃の簿記は、北農式と呼ばれ、単式の大福帳簿記に企業簿記の原理を取り入れた単純なものだった。

関連記事

powered by weblio