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岡本信一の科学する農業

農場に無駄な肥料を撒いていないか

作物の栽培が上手くいかない要因について、数回にわたって述べてきたが、その最終回として、施肥の見直しをテーマに話を進めたい。
圃場内の不均一を生み出す要因が一つでもあると、同じように施肥をしたとしても、場所によっては大きな株はさらに大きく、小さな株はより小さくなる。これは、施肥のやり方次第では、生育期間中のバラツキがさらに増大することを意味する。施肥を見直す前に、できるだけ土壌の排水、播種床づくりなどの影響は排除しておくべきである。

最適な施肥量を聞かれても答えられない理由

まずこれまで繰り返し述べてきた、施肥の考え方をおさらいしてみよう。
基肥を中心とした施肥というのは、基本的に作業体系に合わせたものであって、作物の側から見ると基肥(特に窒素)はほとんど必要ない。作物の成長とともに必要な栄養分は追肥を施すほうが作物にとっては理想的である。
施肥量を見ると、窒素分については、多くの人が最大量を施肥している。しかし、本来は最小量を施肥して、足りなければ追加的に施すほうが天候などの影響も受けにくい。基肥の量は最小限に抑える方向を目指すべきである。過剰であれば取り返しがつかないが、足りなければいくらでも足すことができるからだ。
では、バラツキを抑えるための最適な施肥量とはどのくらいなのだろうか。「科学する農業」というタイトルで連載をさせていただいているのに、基本的な施肥量すら答えられないのか!!と言われそうだが、私はその問いに答えることができない。
巷には、施肥基準と呼ばれるものがある。都道府県、さらには地域ごとに示された施肥量の基準だが、この数値には大した根拠はない。地域によっては施肥基準の施肥量が大きく変わることもあるが、その施肥量をかなり増減させても、作物の収量や品質はほとんど変わらない。さらに言えば、同じ地域で同じ作物・品種の種を同じ日に播いても、同じ施肥量が最適とは限らないのだ。
ちなみに、なぜ土壌の化学分析をして施肥量を決めるのかというと、基本的には、土壌の養分バランスを正すためである。多くの場合、窒素を除く5大要素(リン酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム)の土壌中の均衡を整えるために行なわれているといって良い。窒素量は、EC(電気伝導度)などの土壌分析値を目安に施肥量が指導されている。
私は毎年、全国の畑で作物の栽培試験を行なっているが、必ず、無施肥区を設定することにしている。そうすると、肥料がなくても普通に育つし、収量は若干減ることがあっても、大して変わらないことも多いことがわかる。
もちろん、私はその結果を見てニヤニヤしているが、試験をさせていただいた農家の方は素直に驚いてくださる。なぜなら、作物の成長には肥料が必要不可欠だと考えているからである。
肥料を与えなくても作物がとれるのはなぜかというと、堆肥などの有機質資材の長年の投入により土壌養分が潤沢であるということがまず考えられる。そして、もう一つの理由は土壌の物理的条件が良いために根の張りが良く、養分を十分に吸収できるためである。

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