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海外レポート

米国食農紀行(最終回)消費者と築く有機農業の世界 バイオダイナミック農法とCSAの可能性(後編) ケンタッキー州のフォクス・フォロウ・ファーム

ケンタッキー州の中心地ルイビルから車で東に向かうこと約15分の場所にあるフォクス・フォロウ・ファーム。前回紹介したように、ここの農場主のジェニー・ニュートンさんが所有している土地は実に1300エーカー(530.5ha)に及ぶ。野菜を作っているのはわずか6エーカーだけで、残りについては家畜を放し飼いしたり、飼料作物を作ったりしている。飼っているのは牛が270頭、豚が5頭、鶏が20羽である。
6エーカーのうち、4エーカーの畑はCSA用だ。CSAとは「Community Supported Agricul-ture」の略で、一般には「地域で支える農業」と和訳される営農形態である。具体的には、地域内で消費者が自分たちで消費するための農産物を農家から直接購入するシステムを指す。
この仕組みで注目すべきは、播種前に農産物の購入代金となる年会費の授受を済ませること。農場での収穫物が豊作であれば消費者は手にする農産物が多くなり、逆に不作であれば少なくなる。いずれの結果になっても年会費が変わることはない。つまり、天候による凶作のリスクを消費者も負うわけである。 
CSAを通じて消費者は新鮮で旬な農産物が手に入る。一方、農家にとっては収入が安定して営農計画を立てやすいのが利点で、まさしく「地域で支える農業」といえる。
フォクス・フォロウ・ファームはCSAの年会費を600ドル、日本円にして約6万5000円(2014年10月24日現在)に設定している。CSAを始めて間もないこともあり、会員はまだ50人に満たない程度で、収穫物は基本的に会員に受け取りにきてもらっている。
こうした数字はCSAに取り組む他の農場と比べてどうなのか。これに関してニューヨーク州にあるコーネル大学農学生命科学部教授だった故トーマス・ライソン氏は、著書『シビック・アグリカルチャー』(農林統計出版、北野収訳)で、最近のCSAの運営に関する調査研究で次のように触れている。
「CSAのほとんどは会員数35~200人の規模だということが分かった。(中略)シーズンあたりの平均支払金額は346ドルだったという」
これを踏まえるとフォクス・フォロウ・ファームの年会費はやや高い設定だが、会員数は平均的な枠の中に収まっている。会費による売り上げは推測するに年間300万円を切る程度。ただ、後で述べるように、農業を通じた地域の人々とのかかわりはCSAだけにとどまらない。
ところで、CSAといっても日本人にはなじみがないと思われるかもしれないが、実はその発祥は1960年代に日本で始まった生産者と消費者による「産直提携」という営農形態にある。「提携(Teikei)」という言葉が米国に渡ってCSAに変革を遂げたのだ。

ローテーションで放牧

畑が一般向けであってもCSA向けであっても、そこで実践している農法はバイオダイナミック農法という点では同じ。その一端を見せてもらった。
農場の一角でジェニーさんが指で示した方向には柵の中で鶏が放し飼いされていた。数週間したらこの柵は外して鶏に移動してもらい、代わりにこの場所を畑にして野菜を作り始めるという。

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