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特集

水田農業の「当たり前の経営」 そのコメづくりは必要とされているか


「カネのことばっかり言うんか。それなら自分でやってみい!!」
井狩さんは苦笑いをしながら、当時をこう振り返る。
「父親はとにかく数字を見ない。決算報告は見ないし、細かいところは詰めない。逆切れされて腹が立ちましたよ。それで、思いました。このおっさんに任せたらあかんなと(笑)」
自らの努力で給料を上げるべく、まずは税理士の叔父に相談をした。返ってきた答えは、売り上げアップとコストダウンを図れという当たり前のことだった。具体策として勧められたのは、複数の業者から見積りを取る「相見積」。それまでは他の農家と同じように、農業資材の調達や信用・共済事業についてはすべて農協を利用してきた。早速、それを止めて、肥料や農薬などすべてで相見積を取ることにした。
その効果はいきなり出た。生産資材費が200万円以上減ったのである。コメも農協の系統出荷から自主販売に切り替えた。その結果、初年度に農業所得は1000万円ほど上がったというから驚きだ。これを機に農協とは一定の距離を置くようになる。
さらに経費が削れるところを探した。たとえば種代は、10a当たりの播種量を4kgから2.5kgに落とした。また格納庫を建てるにしても、コンクリート打ちの頑丈な建物にせず、「雨風だけ防げればいい」という発想で、直径2.4cmの短管で骨組みを築いて、そこに強度のあるビニールをかけただけの簡易なハウスを建てた。建築費は約120万円。コンクリート打ちなら1000万円はかかるという。
「(カネを)ケチるところはケチる。使うところは使う。そこをきちんと使い分けておくことが大事やと思っている」と井狩さん。
「ケチる」という意味では、イカリファームの設備には中古品が少なくない。冒頭に紹介したローリー車に加え、色彩選別機のコンプレッサーや遊休施設だった建物を移築してきたコメの保管庫もそうだ。いずれも格安で手に入れている。どういう伝手(つて)で入手できたのか尋ねると、次のような答えが返ってきた。
「普段から『あれが欲しい、これが欲しい』と口を大にして言っておくんですわ。すると、何か見つかった時に声をかけてくれる。異業種ともきちんと付き合っておくと、結構欲しいものが手に入りますよ」

【地域の若手農業者との連携お互いの利害は一致する】

井狩さんが目指すのは「高付加価値化」ではなく「低コストで高品質なモノづくり」だ。さらなる低コスト化に向けて、これからは地域の仲間たちと連携することを検討している。その一つに農地の交換分合がある。それぞれが作業する農地を団地化できるように、互いが耕している農地を交換していくという。

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