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岡本信一の科学する農業

土壌の物理性・生物性の数値化も可能になる!

「良い土とはどんな土でしょうか」という質問を現場で投げかけることがある。すると、多くの方が、一瞬口ごもってしまう。土壌を改善し、維持することは大事なのだが、一体どこを目指しているのか。皆さんにも、今一度考えていただきたい。
一般的に農業で言う「良い土」とは、栽培する作物がより良く育つ土壌ということだろう。かつて農耕が始まった頃は、作物の取れる土壌がある場所に移動して農業を行なっていた。その後、作物の獲れない土壌は肥沃にして獲れるようにすることが可能になり、場所を移動しなくてもそれを繰り返す農業が行なわれている。いわゆる肥料の類で不足を補えるようになってから、農産物を作るのに不適な場所でも農耕が可能になったのである。
たとえば、火山灰土で特にリン酸吸収係数が高い土壌がある。もともと土壌の物理的な特性が良かったので、リン酸の不足を補うことにより作物を栽培するのに適する土壌となった。また、もともと雨の多い日本では酸性土壌が多かったが、石灰などにより容易にpHを調整することで、これも克服することができるようになった。そして、最も貢献したのは、窒素分の不足する場所での窒素肥料の施用である。窒素分の不足を補えることの意義は大きく、それにより、作物生産の安定性は飛躍的に向上したと考えられる。
このような肥料の投入による「土づくり」は、土壌養分や土壌の化学的な不均衡を補ったり、調整したりすることが目的だった。このような土壌の化学性の改善は、日本では、1970年代には終了しているのだ。しかし、肥料偏重に伴う土壌の有機物の減少が注目され、有機物の投入が積極的に行なわれるようになり、現在に至っているのである。

化学性の改善は既存技術
物理性と生物性にも注目

この連載の中では土壌の物理性の重要性に言及しているが、化学性の改善は大部分がすでに技術体系として浸透しているためである。これは、土壌の化学性も重要であることは間違いない。どちらが欠けてもまともな栽培ができる土壌とはならない。
さらに言えば、昨今、注目されているのは土壌の生物性である。これは、土壌中の微生物の量が簡単に測定できるようになったためである。
これまでも化学性、物理性、生物性の観点から考えるべきだと言われてきたが、現場では、最近になってようやく化学性以外の部分にも目が向くようになったというわけだ。実際には化学性と物理性、生物性は密接に関係しており、本来それらを別々に考えるべきではない。

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