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岡本信一の科学する農業

土壌の物理性・生物性の数値化も可能になる!


微生物の重要性を強調して説く人がいるが、微生物の餌となる有機物の質や量、土壌中の酸素の量により専有する微生物は変わり、pHの影響も受ける。有機物に含まれる窒素分などは、微生物による分解などの過程を経て、土壌中に放出される。いずれも、微生物が化学性や物理性に影響を与えている事例である。
このように、土壌の化学性、物理性、生物性は相互に影響しているだろうということは容易に想像できると思う。しかし、土壌の評価が、化学性を中心に行なわれてきたのには理由がある。
それは数字としてきちんと把握できる点にある。具体的に述べると、pHという指標がなければ、石灰の散布量は経験と勘に頼ることになる。数値が示されれば、具体的にどうすれば改良できるかがわかる。
生物性にしても物理性にしても測定して、それを数値に変えることができるようになったというのは大きな前進だ。土壌を測定して、変える方向性を明確にできることにその意味がある。
土壌の物理性でも同じことである。例えば、10段階評価でどの部分を変えたほうが良いというような指標があれば、どのように改良していくのかという明確な指標が与えられる。また、生物性も感覚ではなく数値として評価することができれば、どのようにすれば微生物を増やすのに一番有効なのかを知ることもできるようになるだろう。
いずれにしても、まだ土壌の化学性、物理性、生物性は、独立して評価されているが、何らかの形で融合することが必要である。

良い土とは、作物の根が
張ることで変化する土壌

冒頭の問いに戻る。私が考える良い土というのは、最初に上げた作物がよく育つことに加え、作物が土壌を変えてくれるような環境にある土壌ではないかと考えている。つまり、作物の根が旺盛に張ることによって土壌環境を変えていく状態である。
自然栽培では、あまり圃場を耕さずに作物を栽培する。そういった不耕起栽培でも、通常の栽培方法と比べて収量が変わらない事例も多い。肥料を撒いて、耕して、作物を植え付けるという従来の栽培の常識からは想像できないが、これまで集積したデータを見ると、別に不思議なことではない。
私達ができるのは、作物の根が旺盛に張って、作物が自らに好適な土壌をつくるための環境を整えることである。そして、人為的な「土づくり」を最小限にすることではないかと思う。「土づくり」は、その最低条件を作るための作業ではないだろうか。
もちろん土壌の物理性の測定も評価も、まだまだ始まったばかりである。と言いながらも、すでに貫入式土壌硬度計で多くの圃場のデータを取った結果から、見えてきたことがある。それは土壌の物理性を改善する方法は今まで考えられていた方法に限らないということだ。

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