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事務所でそんな話を一通り聞いた後、中国野菜の実物を見せてもらうべく、門を入ったところにある集荷場に向かった。その途中、来るときにちらりと目にしていた石碑を改めて見てみた。そこには「」という文字が刻まれている。濫觴とは「長江も水源にさかのぼれば、をべるほどの、または觴にれるほどの小さな流れである意」(『広辞苑』から引用)。つまり、物事の起源や起こりを指す。濫觴の文字の横には「中国野菜栽培草創の地」と刻印してある。この石碑には西川家の自負が表れている。
味を決めるのは品種と肥料
集荷場に入ると、水洗いされたばかりの野菜がそれぞれコンテナに詰められていた。チンゲンサイのほか、根の大部分がそれぞれ紅色や緑色で染まっているダイコンなど。まだ発売されていない野菜もある。
「これ、食べてみて」
そう言って、西川がぐっと目の前に差し出してきたのは小ぶりのニンジン。言われるまま、ばりばりとかじってみると、そのうちに甘さがじんわりと伝わってきた。その後に口にした紅大根も同じだ。チンゲンサイに至っては生で食べてもえぐみがなくて甘い。その様子を見ていた西川は「どうだ」と言わんばかりの自信にあふれた表情である。たしかにこの甘さはそれから随分と長い間、口の中を楽しませてくれるのだった。
西川は中国野菜を作るにあたって、心に決めていることがある。それは「本場中国で食うよりもうまい野菜を作ること」。味の決め手となる要素は二つあるという。一つは品種。サカタのタネと品種を開発するにあたって、まずいと感じた野菜については徹底して排除してきた。
もう一つの味の決め手は肥料。肥料の重要さについて西川は話の合間に何度も繰り返した。彼の持論は「野菜は畑で味をつけるもの」である。
畑に投じているのは海藻を原料にした肥料。それから昨年より「みかひ」をすべての畑に入れている。
みかひというのは、愛媛県の肥料会社カイゼン(株)が開発したばかりの肥料。名前の通り、愛媛の特産であるミカンの絞った皮を主原料にしている。県内のミカンの産地では昔から、ミカンの皮を畑にまくとおいしい野菜が育つと噂されてきたことが開発のヒントになっているそうだ。ほかに広葉樹のおがくずとふすまを混ぜ、完熟発酵させて製造している。
「これを入れると味がすっきりするんですよ。おまけに硝酸態窒素が減るからえぐみも抑えられる」
西川はこの肥料に「調味肥料」という別名を付けた。製造メーカーのカイゼンはこの名前で商標登録を取ったばかりだ。
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西川圭二 ニシカワケイジ
西川ファーム
代表
1961年、千葉県柏市生まれ。79年に宮崎県にある南九州大学園芸学部を卒業後、実家で農業を始める。東葛飾地域4H(農業青年)クラブ会長。2010年、父から経営を受け継ぐ。千葉県農業指導士として毎年のように研修生を受け入れ、後進の育成にも当たっている。
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