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シリーズ水田農業イノベーション

食料自給率とトウモロコシ国産化の寄与度 ―新しい農村の未来像が見えてきた―


仮に150万トンのNon-GMOトウモロコシの輸入代替に成功すれば、食料自給率を0・5%高めることができる。そのための転作助成の財政需要は515億円で済む。ちなみに、Non-GMOの輸入金額は価格上昇を考えれば年間540~600億円に達するのである。
ただし、トウモロコシ国産化には阻害要因がある。飼料用米への法外な高額交付金がトウモロコシ国産化を妨げている。農家は当然、収入の多い作物を作付する。図1に示すように、10a当たり11・7万円もの交付金を得る飼料用米を栽培した方が農家は得する。補助金がトウモロコシ国産化の障害になっている。ただ、先端的農家は、そういう法外な交付金(農家収入の9割は交付金)は長続きしないと見ており、先を読んでトウモロコシ国産化に取り組み始めている。
なお、遺伝子組み換えの飼料用トウモロコシとの競争はどう評価されるか。飼料用トウモロコシの輸入価格は27000円/トンである。図1に示したように、10a当たり販売収入は2万1000円、農家収入は交付金を加えても5万600円である。この場合、農家の所得は2万6000円となり、米作りより低くなる。これでは転作できない。しかし、10a当たり1万5000円の交付金上積みがあれば、飼料用トウモロコシも競争力があることになる。

水田裏作の牧草栽培

飼料の輸入代替に関しては、もう一つ戦略的な作物がある。水田裏作の牧草(ライ麦)生産である。今、水田は冬期の半年間遊んでいるが、“裏作”としてライ麦(牧草)を生産すれば、粗飼料の輸入を減らすことができる注。ライ麦は寒さに強い。10月末~11月に播種し、4月末収穫できる(出穂前)。5月の田植にも邪魔にならない。栽培はコントラクター(請負作業)を活用すればよい。コスト競争は輸入牧草に負けない(筆者試算。拙稿「アベノミクス円安で大型酪農の経営危機(下)‐1石5鳥の水田裏作のライ麦‐」『週刊農林』2013年7月15日号参照)。
酪農家をはじめ畜産農家がライ麦作りを行うのであるが、水田農家から冬期の間、土地を借りなければならない。その借地料の捻出に困っている。しかし、水田活用の直接支払交付金が10a当たり2万3000円あるので(二毛作助成15000円、耕畜連携助成13000円)、借地負担能力は十分ある。
牧草を自給できれば、これも食料自給率の向上につながる。筆者は、水田裏作のライ麦は、雇用創出、食料自給率向上、飼料コストダウン、循環型農業、水田農家所得増加、という5つのメリットがあることを指摘してきた。「一石五鳥」である。一番の優良農地を遊ばせておく手はない。一番の優良工場を半年間遊ばせておくなんてことは他産業であるだろうか。(拙著『新世代の農業挑戦』全国農業会議所2014年、第1部5章参照)。

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